2004年シーズン、惜しくもプレーオフ進出を逃した千葉ロッテマリーンズ。
しかしながら、将来を見据えた戦いぶりには大きな期待を抱かせた。
そして、躍進の要因の1つにはファームから上がった若手選手の活躍を挙げることができる。
今年からファームの監督になったハイディ古賀と浦和マリーンズの1年を追った。

【2】
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[10]トレードの意義 5/31

 5月27日、1件のトレードが発表された。
 マリーンズは前田浩継(投手)を獲得し、田中充(投手)・丸山泰嗣(内野手)をスワローズへ放出。マリーンズ2軍の選手が2人もシーズン中にチームを移ることになった。
 トレードが合意に達した5月26日、西武ドームでの試合に両選手は出場していた。
 田中はリリーフとして1イニング、丸山は李承_の代走として途中出場していただけに、まさかこの後トレードを通告されるとは青天の霹靂だっただろう。トレード話が持ち上がっていることはハイディ古賀の耳にも届いていたが、この日に合意に達することまでは予期していなかった。

 「丸山にとっては良いトレードだと思うよ」とハイディ古賀は語る。
 確かに、マリーンズ2軍の中で丸山の居場所はなかった。2年前のルーキーイヤーにはシーズン中盤まで首位打者をキープするなど非凡な打撃センスを披露したが、西岡剛・早坂圭介という高卒ルーキーの加入で昨年は出番が減少、今年はさらに押しやられてしまった。
 マリーンズの内野手は藤井宏海の投手転向を差し引いても18人というリーグ2位の大所帯。ニ遊間には西岡・早坂が常時レギュラーとして出場し、塀内久雄・原井和也が控える。丸山の出番はもっぱら代打・代走に限定され、38試合中出場したのは23試合(スタメン4試合)、打席に立ったのは24回だった。
 そんな丸山にも2度ほどチャンスが訪れた。塀内・原井の相次ぐ昇格と早坂の故障でスタメン出場が巡りこんできたのだ。しかし6度の打席は全て凡退、おまけに2つのエラーを犯したこともあって「もう駄目ですよ」と試合後の返事にも力がない。「もう終わった」と声をあげながら球場を後にする背中には、窮地に追い込まれた悲壮感が漂っていた。
 丸山の移籍は、チーム編成のためにも、そして何より本人のためにもメリットが大きい。リーグ最小の13人を擁するスワローズ内野陣ならば出場機会は増加するだろう。

 田中は3年目にして初の開幕1軍入りを果たし、プロ初勝利も挙げた。4月14日以降は2軍で調整中だったが、27試合中15試合(防御率3.10)に登板し「貴重な中継ぎ左腕」(ハイディ古賀)として欠かせない存在だった。
 獲得したスワローズは早速1軍に呼び上げ、慣れ親しんだ千葉マリンスタジアムを移籍後初登板の舞台として用意した。田中にとってもこのトレードは飛躍のチャンスなのかもしれない。

 日本ではこうしたトレードの話題が少なく、シーズン中となればさらに激減する。マリーンズを例にとっても、件数が少ない上にチームを大きく変革するようなトレードも皆無に近い[別表参照]。
 片やアメリカでのトレードは日常茶飯事であり、シーズン中であろうとひっきりなしに行われる。
 優勝を狙えるチームは若手を餌にベテランを補強し、翌年以降を見据えて改革に着手するチームは高額選手を放出しプロスペクトを獲り漁る。知名度の低いマイナーリーガー同士のトレードも活発だ。
 シーズンが終われば、マイナーで埋もれた選手を救済するための方策として「ルール5ドラフト」が実施される。1年を通じてトレード戦線は活性を極め、選手はより良い機会を求めて全米を奔走する。

 こうした日米の人材の流動化に関する違いを突き詰めると、意思決定を下す人物の「決断力」と「野球に対する精通度」の差に行き着く。
 編成部門がトレードの案件について球団トップに伺いを立てても、畑違いの親会社からやって来た人物が中枢に君臨する日本では、危険を冒してまでの現状打破には躊躇する。大型トレードが少ないのもそのためだ。
 片やその道のプロと呼べるべき人材がGMとして牛耳るアメリカでは、状況を打開するために可能な限りの手を打つ。獲得する選手に大きな期待を寄せることが可能と判断すれば、中心選手を放出してまでも実行する。
 「リスクを恐れて守勢に回る」ことで大過なくやり通す日本、「失敗を恐れず攻勢に転じる」ことで新たな機会を創造するアメリカ。国民性の違いがそのままトレードに対する姿勢に投影されているのかもしれない。

 ハイディ古賀もホークスの編成時代にはトレードをまとめあげた経験がある。実質的なGMとして辣腕を振るった根本陸夫の命を受けて左投手を探していたハイディ古賀は、ジャイアンツの吉田修司に目を付ける。それが1994年のシーズン中に発表された岸川勝也とのトレードだった。ドラフト1位で入団しながら芽の出なかった吉田は、新天地・福岡でホークスの貴重な中継ぎとして優勝に貢献した。
 環境の変化、指導者との巡り合せ、気持ちの切り替え、選手の眠っていた力は些細なことがきっかけとなる。そうしたチャンスを作り出すのがトレードなのだ。

 5月29日の鎌ヶ谷でのファイターズ戦、3点リードの6回裏という場面で前田は新天地デビューを果たした。
 「試合の流れから前田に行ってもらった」と話すハイディ古賀をよそに、チームに合流したばかりで訪れた出番に「いきなりのことでびっくりした」と驚きを隠せなかった前田。
 丸山の後を継いだ背番号37は、左のサイドハンドから繰り出す投球で左打者2人を三振に仕留めマウンドを後にした。総立ちで待ち構える新しいチームメイト、スタンドから拍手と喝采で歓迎する観客。まさかの光景に帽子を取って遠慮気味に応えながらダグアウトに消えて行った。
 「ファンが暖かく迎えてくれたので嬉しかった」(前田)と、2軍の試合で敵地にも関わらず集まってくれたファンに感謝した。
 2対1のトレード、2001年に大活躍した経緯もあり、前田に対する期待は大きい。そして、無事に1軍に送り出すことは2軍首脳陣に課せられた新たな任務となった。「これから本人とよく話し合うよ」とハイディ古賀は今後に期待を膨らませた。

 トレードが発表されると、周囲は損得勘定を弾き出し今後の成否に注視するのが常だ。トレードが少ない日本ではなおさらその視線は厳しい。一たび失敗に終われば、その余勢を駆って一気に責任を追及する動きが激しくなる。ただでさえ1軍は負けが込んでいる中、それを覚悟の上で敢えて攻めに転じたマリーンズの姿勢に対しては評価するべきだ。そして、去っていった田中・丸山、新たに加わった前田の3者の活躍に期待しよう。
 トレードの意義とは「互いの弱点を補い合う」行為であり、「不必要な者同士を交換する」作業では決してないのだから。

[マリーンズ過去10年のトレード]
相手球団
獲得
放出
2004
スワローズ
前田浩継[投]
田中充[投]・丸山泰嗣[内]
2003
タイガース
橋本武広[投]
吉田篤史[投]
2002オフ
ライオンズ
垣内哲也[外]
椎木匠[捕]+「金銭」
2002オフ
ドラゴンズ
波留敏夫[外]
酒井忠晴[内]
2001オフ
ファイターズ
黒木純司[投]
武藤潤一郎[投]
2000オフ
スワローズ
山崎貴弘[投]
寺村友和[投]
1999オフ
ジャイアンツ
石井浩郎[内]
河本育之[投]
1997オフ
ジャイアンツ
小原沢重頼[投]
榎康弘[投]
1997オフ
ブルーウェーブ
渡部高史[投
五十嵐章人[内]
1997オフ
ドラゴンズ
樋口一紀[内]・小島弘務[投]
南淵時高[内]・岸川登俊[投]
1999オフ
ドラゴンズ
椎木匠[捕]
(無償)
1996オフ カープ 近藤芳久・井上祐二[投] (無償)
1996オフ ベイスターズ 高橋眞裕[内] 「金銭」
1996オフ ジャイアンツ 「金銭」 E・ヒルマン[投]
1996オフ タイガース 鮎川義文[内 定詰雅彦[捕]
1996オフ パドレス S・デニス・J・トンプソン[内] 伊良部秀輝[投]
1996 ドラゴンズ 与田剛[投]・吉鶴憲治[捕] 内藤尚行・森廣ニ[投]
1995オフ ドラゴンズ 仁村徹・酒井忠晴・山本保司[内] 前田幸長・平沼定晴[投]・樋口一紀[内]
1995オフ ファイターズ 田村藤夫[捕] 「金銭」
1995オフ ドラゴンズ (無償) 愛甲猛[内]
1994オフ ドラゴンズ 「金銭」 「金銭」M・ホール[外]
1994オフ スワローズ 内藤尚行[投] 青柳進[捕]
1994オフ スワローズ 金沢次男[投] (無償)
1994オフ ドラゴンズ 津野広志[投] 「金銭」
1994オフ
ジャイアンツ
西岡良洋[外]
「金銭」

[第10週]
勝敗
相手
球場
昇格
降格
5/24(月)





5/25(火)
○7-3
L
西武ドーム
川井貴志
塀内久雄
5/26(水)
○4-3
L
西武ドーム


5/27(木)




5/28(金)



5/29(土)
○9-8
F
鎌ヶ谷
里崎智也
辻俊哉
5/30(日)
○9-5
F
鎌ヶ谷


<40試合経過>22勝18敗


[9]昇格を決めるのは 5/24

 
5月18日、今シーズン早くも3回目となる親子ゲームが湘南シーレックスを迎えて行われた。
 いつものように試合開始時からベンチ脇に陣取ったバレンタインは選手に声を掛けながら観戦する。それだけでは飽き足らなくなったのか、今度はスタンドに上がってジョギングを始め、最後は即席のサイン会まで開催した。厳密には客席に座っているバレンタインにファンが押し寄せたわけだが、嫌な顔を一つ見せずペンを走らせた。

 フィールド上では選手たちが最高のファンサービスを提供した。
 2点のビハインドで迎えた9回裏、一気に3点を奪ってサヨナラ勝ち。千葉マリンスタジアムに朝からやって来たファンは劇的な勝利に溜飲を下げた。
 過去2回の親子ゲームが敗戦だったことと、1軍での連敗で鬱積したものもあってか、一死満塁で波留敏夫の打球がライトの頭を越えた瞬間に最も興奮していたのはバレンタインだった。
 試合後は選手を集めてダウアウト内でミーティングを行う。バレンタインの激励がハイディ古賀を介して伝えられた。

 この試合の殊勲は今江敏晃だった。
 9回裏、無死満塁という最高の場面で「サード横のライナーかと思ったらレフトフェンス近くまで飛んでいったな」(ハイディ古賀)と驚嘆する同点2塁打を放つ。バレンタインの眼前というこれ以上ない舞台で持ち前の勝負強さを発揮した。
 ここまでイースタンリーグで三冠王を狙えるほどの好成績[別表参照]を残し、一軍昇格を望む声も沸き起こってきた。そうした状況だっただけに、この日の活躍を振り返りハイディ古賀も「これで決まったかな」と観念と喜びが入り混じった表情を浮かべた。

 一方、調整中の李承_は不発に終わる。
 今江の同点打でなおも無死2・3塁というサヨナラ機に敬遠されたことが唯一のハイライトだった。
 翌日のロッテ浦和球場でも見逃し2つを含む3三振と振るわない。
 「自分のベストを出せばうまくいくが、今はそれがうまくいっていない」と話す李だけでなく、ハイディ古賀も韓国人記者に囲まれる。「李の調子はどうなのか?」「打撃フォームをどう思うか?」「バレンタインとはどんな話をしているのか?」。
 毎日のように繰り返される問いに辟易した顔を見せることなく丁寧に答える。「考えすぎてバットが出ていない。厳しいボールでもファールでかわせるようにならないといけない」と李の迷いを指摘する。
 その中でも韓国人記者、いや韓国国民の最大の関心事は、「李はいつ1軍に上がるのか?」である。
1軍登録を抹消された選手は復帰まで最低10日間は待たなければならない。順当にいけば5月21日が1軍復帰の最短日となるが、ハイディ古賀は個人的な見解と断った上で、「おそらく1軍に上がることになると思うよ」と話した。

 あれから4日が経過した。その間に1・2軍の入れ替えは一つも公示されていない。5月23日現在、今江も李もファームで汗を流している。
 ハイディ古賀が語ったこととは裏腹の展開だ。つまり、昇格・降格の決定権を二軍監督は握っていないことがそこから分かる。もちろん2軍の選手を推薦という形で1軍へ紹介することもあるし、1軍からの打診を受けてその選手の昇格が適切か否かの意見を挟むこともある。それでも最終的な判断はバレンタインに委ねられている。

 一軍監督が昇格・降格の決定権を握っているのは、マリーンズに限らず日本球界では一般的なことだが、アメリカではそうした人事に対して現場の意向は反映されない。傘下となるマイナー各球団から送られてくるレポートとマイナー統括部長の報告を元にして、GM(ゼネラル・マネージャー)が最終的な決定を下す。
 GMの下には、「メジャーリーグ」「マイナーリーグ」「スカウティング」と大別すると3つの部門が並列している。
 メジャーの監督はメジャーリーグ部門のヘッドではあるが、組織全体の中ではあくまでも一部門の長に過ぎない。バレンタインもニューヨーク・メッツ監督時代の晩年には、オーナー・GMの意向に苛まれた。

 こうした日米の差は、野球に対する土壌の違いと言える。
 2軍という組織が1軍の付属機関に過ぎない日本では、一軍監督は総監督に近い。ニッポンファームはあくまでも1軍が勝つための予備軍として位置付けられている。しかも最大70人までの保有しか許されないため、一軍監督が全選手に目を配ることは比較的容易である。
 アメリカのシステムに染まりきったバレンタインだが、一転して日本では苦悩から解き放たれて実権を握っている。
 試合後、空っぽのダグアウトの中で、整備中のフィールドで、帰り支度を整える選手達が行き交う通路で、ハイディ古賀の英語が響き渡る。電話の相手はバレンタインだ。通訳を介さずにコミュニケーションをとることが出来るので、1・2軍の連携は密に保たれている。

 今後の焦点は、今江と李をバレンタインはいつ1軍にコールアップするかに絞られる。
 ハイディ古賀は今江について「昇格させる時はスタメンとして使って欲しい」とバレンタインに要望している。
 李に関しては、「出来れば万全の状態になってから戻って欲しい」と本音を漏らす。
 ポジションの重複、外国人枠の問題が絡むので、2人の今後は未定のままだ。明日昇格するかもしれないし、数ヵ月後も2軍にいるかもしれない。
 5月22日、市営浦和球場では5番・李がライト場外へ特大のホームランをかっ飛ばせば、4番・今江もバックスクリーンへ放り込む。共に4打点の荒稼ぎでチームの大勝に貢献した。
 遅かれ早かれ1軍でプレイすることになるであろう2人はマリーンズ打線の起爆剤となれるだろうか。

[イースタンリーグ打撃三冠]
打率
本塁打
打点
1
今江(マリーンズ).376
吉川(ジャイアンツ)10
今江(マリーンズ)31
2
ユウイチ(スワローズ).360
吉村(シーレックス)8
畠山(スワローズ)30
3
吉川(ジャイアンツ).357
七野(シーレックス)8
吉川(ジャイアンツ)30
4
林(ファイターズ).347
林(ファイターズ)7
林(ファイターズ)22
5
寺本(マリーンズ).322
中村(ライオンズ)7
吉村(シーレックス)22
6
原(ジャイアンツ).319
三浦(ジャイアンツ)7
ユウイチ(スワローズ)22
7
畠山(スワローズ).318
今江(マリーンズ)6
石井義(ライオンズ)20
8
吉村(シーレックス).3153
石井義(ライオンズ)6
渡辺(ファイターズ)20
9
宮崎(ライオンズ).3149

三浦(ジャイアンツ)20
10
玉野(ライオンズ).311


成績は5月23日現在

[今江敏晃のここまでの成績]
試合数
打率
打数
得点
安打
二塁打
三塁打
本塁打
打点
盗塁
四球 死球
三振
35
.376
133
25
50
14
1
6
31
1
9
2
19

(1位)
(2位)
(1位)
(1位)
(1位)

(7位)
(1位)




成績は5月23日現在


[8]出場機会の奪い合い 5/17

 5月11日、5回裏に代打のアナウンスが響くとニ岡智宏(ジャイアンツ)効果で集まった大観衆からざわめきが起こった。その視線の先には、李承_がいたのだから無理もない。
 朝の便で札幌を発ち早速2軍に合流した韓国の至宝は、先頭打者として打者一巡の口火を切り、2打席目は逆転2塁打、一気に7点を奪い連敗を5で食い止める立役者となった。
 突然の降格というニュースは韓国にも衝撃を与えたが、取り巻く韓国人記者にも同様だ。
 当然、二軍監督であるハイディ古賀からのコメントは李の動向を伝えるためには欠かせない。例えるならば、ヤンキースの松井秀喜がマイナー降格を通告され、行き着いた先の監督ということか。
 試合後は2軍では例を見ない数の報道陣に囲まれ写真も撮られる。降って沸いたフィーバー振りに「賑やかになって良いじゃないか」と笑みをこぼした。

 李が2軍デビューした試合、最も活躍したのは同じ1塁手の澤井良輔だった。3打数3安打、ここ4試合でも9打数6安打と好調を維持している。
 試合後に引き上げる姿を見つけると「澤井、気を抜くなよ」と念を押すように声をかける。ハイディ古賀は開幕戦で4番に起用するなど、眠れぬ大砲に期待をかけていた。ようやく実力を示し出したことに納得しながらも油断を警戒していたのだろう。
 しかし、翌日からのジャイアンツ球場での2連戦で澤井が打席に立つことはなかった。いや、使うことが出来なかったというのが実情だ。セリーグに所属するチームの主催試合ではDH制度が採用されない。試合出場を誰よりも優先させるべき李が1塁を守る限り、澤井に入り込む余地はなかった。

 李に先立つこと1日、故障から復帰した井上純と入れ替わりで波留敏夫が2軍に降りてきた。
1軍では開幕戦でスタメン出場を果たしたベテランが6人の外野手争いに参入。さらに李が1塁に入ることで、ユウゴーも外野の守備練習に加わり、3つの枠を巡る争いを繰り広げている。
 ハイディ古賀は寺本四郎、喜多隆志という若手に目をかけてはいるものの、ベテランの起用を軽んじることは出来ない。「現在の調子と先発が右か左かによって決めている」という選手起用をしているが、これだけの選手がいると使い分けが難しい。ここまでリーグ4位の高打率を残している寺本でさえも、左投手が先発の時はスタメンを外れている。

 野手の出場機会を巡る争いは熾烈だ。この問題にはマリーンズに限らず日本ではどの2軍も多かれ少なかれ直面する。その原因を突き詰めると選手数の多さに行き着く。
 「マイナーリーグの時はスタメン以外でベンチに残っているのは3人ぐらいだった」とハイディ古賀も言う通り、アメリカのマイナーリーグで各チームが抱える野手は12、3人程度に過ぎない。日本の2軍は20人近い野手を抱えている。
 スタメン9人の中に入れる確率を単純計算すると、アメリカでは72%に対して日本では50%を切る。
 そして、「アメリカでは毎日のように試合だった」とハイディ古賀が言うように、試合日程に大きな違いがあることも見逃せない。
 日本では週4、5試合に対して、アメリカでは1週間に1日でも休みがあれば十分だ。ショートシーズン1A(日本では6軍に相当)では、全76試合を3回の休養日を織り込みながら消化する。20連戦、30連戦という日程が当たり前のように組まれている。
 少人数で実戦経験を叩き込まれるアメリカ、大人数にも関わらず試合の場が少ない日本。選手一人一人の出場機会の日米差には大きな開きが存在している。

 さらに、マリーンズ2軍の場合は出場機会の奪い合いが他チーム以上に激しい。
 理由の1つは、投手の少なさに反して野手の数が多いことにある。特に捕手を差し引いて内・外野手だけに限定すると、その多さはより顕著に示される[別表参照]。
 11日の試合では実に18人もの野手を使った。それでも控えには垣内哲也と現役復帰を果たした杉山俊介が残っていた。そうした状況もあってシーズン前に話していた「ある程度固定されたメンバーで戦っていきたい」という構想も若干の変更を余儀なくされている。
 内野の一部以外は「レギュラーを決めることは無理」(ハイディ古賀)と断言する。
 本音としては若手育成に力を注ぎたいところだが、「このままここにおったら来季がないのかもしれないのだから必死だよ。そういう連中にもチャンスを与えていかないと」とベテランに対しての配慮も覗かせている。

 もう1つの理由は、選手起用の方針にある。
 ハイディ古賀は一部のプロスペクトを徹底して試合に出場させることで育成している。それが今江敏晃と西岡剛であり、全ての試合においてフル出場に近い起用をされている。
 その結果、煽りを受ける選手も現れる。シーズン序盤は今江とサードで併用されていた青野毅も、出場機会はもっぱら1塁手に限られてしまう。1塁手は李、ユウゴーを含めれば5人になり、少ないパイの奪い合いはより熾烈を極める。

 ロッテ浦和球場のダグアウトには2つの出入り口がある。外野寄りの広い出口から球場を後にする選手が一般的な中で、ホーム寄りの狭い出口から帰る選手がいる。ダグアウトをわざわざ横切りベンチに腰掛けているハイディ古賀に挨拶する彼らは、その日の試合に出場していないことが多い。
 「失礼します」と言って通り過ぎる彼らの胸の内には、監督に忘れられているのではないかという不安と自分を試合に使って欲しという訴えが交錯している。だが、選手数の多さと育成方針が相まると、犠牲者となる選手は必ず現れてしまう。

 ここまでのチーム打率.278はリーグ2位、得点176はリーグ1位と打線は好調だ。こうした激しい出場機会の奪い合いが選手の競争原理を刺激しているのかもしれない。
 「これだけの打者が豊富に揃っているわけだから、投手力が整備されれば負けるわけがない」とハイディ古賀は自信を見せる。
 パリーグ最低の攻撃力(打率・得点は共に6位)でスタメンのやり繰りに余念がないバレンタイン、どの選手も打撃が良いため誰を使うかで苦心するハイディ古賀。
 野手起用に悩んでいることで共通している1軍と2軍だが、その理由は余りにも対照的だ。


[2004年の12球団ポジション別選手数]
投手
捕手
内野手
外野手
内+外 野手合計
総合計
ホークス
34
7
16
10
26
33
67
ライオンズ
31
7
16
14
30
37
68
バファローズ
31
7
16
12
28
35
66
マリーンズ
28
6
19
13
32
38
66
ファイターズ
31
8
16
9
25
33
64
ブルーウェーブ
31
7
14
13
27
34
65
タイガース
32
6
15
15
30
36
68
ドラゴンズ
32
7
20
10
30
37
69
ジャイアンツ
30
10
16
13
29
39
69
スワローズ
32
7
13
13
26
33
65
カープ
30
7
17
13
30
37
67
ベイスターズ
32
8
15
9
24
32
64
数字はシーズン開幕時のもの(藤井宏海の投手転向、杉山俊介の現役復帰は考慮せず)

[第8週]
勝敗
相手
球場
昇格
降格
5/10(月)



井上純
波留敏夫
5/11(火)
○12-9
G
ロッテ浦和
セラフィニ
李承_
5/12(水)
●1-4
G
ジャイアンツ


5/13(木) ○2-0
G
ジャイアンツ


5/14(金)



5/15(土)
○8-3
L
ロッテ浦和
塀内久雄
川井貴志
5/16(日)
中止
L
ロッテ浦和


<32試合経過>15勝17敗


[7] 勝つための采配 5/10

 ハイディ古賀が定めたマリーンズ2軍の今年の方針は「試合に勝つことで選手を育成させる」ことにある。選手・コーチに対して「勝ちにこだわろう」と口癖のように檄を飛ばす。
 しかし、5月の初戦を勝利で飾り開幕以来の貯金を作ったのも束の間、その後は5連敗を喫して借金も最多の4(12勝16敗)に膨れ上がった。
 先発投手が早々とリードを許し、打線が後半追い上げるもあと一本がでない。エラーと走塁ミスがジリジリした展開に拍車をかける。
 「5回終了時にリードしていれば勝率9割(9勝1敗)」というデータ[別表参照]が示す通り、先発投手がゲームを作れば勝ちに持ち込めるが、後手後手の試合展開になると勝率は落ち込む。

 試合中に監督が行う仕事には限りがある。投手交代の見極め、代打のタイミング、局面毎の選手への指示、といったところだ。
 それでも「勝負」と「育成」に対して各々が独自の見解を持つ二軍監督だけに、その采配振りには異なる特徴が表われる。
 連敗中とは言え、ハイディ古賀は勝利を放棄した戦いをしているわけではない。この4試合における采配に注視しながら振り返ってみると、そこからは勝利に対する貪欲なまでの姿勢が伝わってくる。

 5月3日、前日までと同じくファイターズと鎌ヶ谷で戦う。
 高卒ルーキー・須永英輝から5回で10三振を喫するなど、合計14三振の完敗。
 それでも終盤は、田中充から長崎伸一、鈴木貴志から谷浩弥という左から右への継投をイニングの途中で行う。まるで1軍の試合を彷彿とさせる投手起用だが、リードしているチームならまだしも、2軍で劣勢のチームがイニングの途中で行うことは稀である。最後まで勝利を諦めない姿勢を体現していた。

 5月7日、千葉マリンスタジアムにファイターズを迎える。
 初回、無死1・2塁のチャンスで曽我部直樹がバントを決める。勝利にこだわるアメリカのマイナーリーグでも見られない手堅い作戦。これが功を奏し2点を先制する。
 2回にはニ死からヒットで出た早坂圭介が盗塁を決め波留敏夫がヒットでホームへ迎え入れる。幸先の良い滑り出しだったが、その後は良いところなし。
 4回に追い付かれ、終盤に次々と失点を重ねた。
 今回もお披露目登板を果たした内竜也が3失点を残したこともあり、観戦していたバレンタインにとっても収穫は少なかったようだ。

 5月8日、舞台をロッテ浦和球場に移してのファイターズ戦。
 4回を終わって1対6と序盤から大きな差をつけられる。
 4回表には4番・林孝哉に敬遠を指示したにも関わらず、続く小谷野栄一に満塁の走者一掃の2塁打を打たれ策も実らず。
 そんな敗色ムードが漂う中、ようやく7回裏に左腕・正田樹に対して右打者の代打攻勢で得点を重ねる。その中には首の寝違えで出場を見送る予定だった垣内哲也も含まれていた。
 1点差に迫り二死満塁、プレッシャーの中で4番・今江敏晃は期待に応えるタイムリーで逆転。
 「随分と引っ張っていたな」とハイディ古賀も振り返る通り、ファイターズは疲労の色を隠せない正田を1点差に詰め寄られるまで替えなかった。その背景には、1軍に送り返すために行けるところまで投げさせるという思惑が働いていた。
 リードをして残りは2回。
 長崎、セラフィニ、内という3枚のカードをいかに切っていくかという算段は、長崎が連続ホームランを浴びて一気に吹き飛んでしまった。
 実はリードされている展開ならば、1ヶ月振りとなる神田義英を投げさせる予定でいた。ところが一気に6点が入るというまさかの逆転劇で勝ちゲーム用の継投に切り替えたのだった。
 予め決められた通りの継投を機械的に行うチームもある中で、マリーンズ2軍は試合展開に応じて継投策が変化する。ブルペンで用意はしていたと言うものの、ハイディ古賀自身が「こんな展開になるとは思いもせんかった」と言う予想外の状況下で、長崎の気持ちの中でどれだけの準備が出来ていたかは分からない。
 それでも打線は最後まで食い下がった。最終回は1点差に詰め寄り、なおも一死1・3塁。ハイディ古賀はダグアウトを出て打席に向かう曽我部直樹に「スクイズもあるぞ」と一声掛ける。ところが瞬く間に追い込まれサインの機を逸してしまった。結局、曽我部は内野ゴロに倒れ、続く今江も再びのヒーローになることは出来なかった。
 富永旭以外の野手17人を使った総力戦は悔しさの募る敗戦だった。

 5月9日、よみうりランドでのジャイアンツ戦。
 3対5の劣勢から8回表に追い付く。エンドラン・盗塁を絡めて1点差に追い付くと、一死2・3塁のチャンスで昨日は決められなかったスクイズを西岡がしっかりと成功させた。同点を第一に考えた作戦ではあるが、その一方で2塁走者が一気にホームを陥れるツーランスクイズも狙っていた。
 「難しい球を西岡が良く決めたよ」と讃えていたが、試み通りに点が取れなかったことが悔しくもあった。
 その裏からは、抑えの切り札・内を同点の場面で惜しみなく投入して勝負を賭ける。
 先頭打者として迎えた10回表、ハイディ古賀は代打策を採らずにそのまま内を打席に立たせた。8回から10回までは内、規定で最終回となる11回はセラフィニと覚悟を決めていた。
 内の3イニング目、四球に盗塁・ボークが絡んで2死3塁のピンチ。吉川元浩が打ち損なったボテボテのサードゴロは、今江のエラーを誘いサヨナラ負けで沈んだ。内は被安打0の負け投手、今江は2試合連続で幕引き役を演じることとなった。

 こうした采配には残念ながら結果が伴っていないが、5連敗は最善の手を尽くした上での敗戦が重なっただけに過ぎない。現に明るい兆しは見えている。
 特に週末の2試合は、最後まで諦めない姿勢を示していた。シーズン序盤は敗戦にも関わらずじゃれ合いながら球場を後にする選手も少なからず存在したが、連敗中にそうした緩い雰囲気は漂っていなかった。
 そして「とにかくみんな大人しい」(ハイディ古賀)と言われていたコーチ陣の目つきが変わってきた。5月8日の試合中にはダグアウト内に怒声も響いた。「うちのコーチがあんな姿を見せるのは初めてだよ」と語るハイディ古賀は驚きながらも、それが嬉しくもあった。

 勝つための采配。
 ハイディ古賀にとって、それはいつもと変わらない采配でもある。連敗中だからと言って特別なことはしていない。目の前の試合を必死に戦い勝利をもぎ取るという姿勢はいつでも同じだからだ。
 2002年にマリーンズニ軍監督を務めた醍醐猛男は『イースタン・リーグ観戦ガイド』の中でこう語っていた。「二軍でも大事なゲームというのが、一年に何度かあると思うんです。そういうゲームに関しては絶対に勝ちに行くという、こだわりも必要です」
 ハイディ古賀にとっての大事なゲームとは、全100試合だ。勝つための野球を一年トータルで徹底しているので試合の重要度が変化することはない。
 「チームを変えることが自分の仕事」と口にするように、意識改革は着実に進んでいる。
 5連敗という深い闇を彷徨っているマリーンズ2軍だが、その暗いトンネルを抜けた時に広がる世界には新しいマリーンズの息吹が芽生えているはずだ。

[5回終了時でリードした場合の試合結果]
日付
対戦相手
先発
(イニング数)
5回終了時
最終スコア
責任投手
4月3日
シーレックス
黒木 (7)
○3-0
○3-1
黒木
4月7日
スワローズ
小野 (6)
○3-0
○5-3
小野
4月10日
シーレックス
黒木 (6)
○3-1
●5-7
酒井
4月11日
シーレックス
三島 (7)
○3-0
○5-2
三島
4月17日
ジャイアンツ
加藤 (3)
○5-4
○11-6
舩木
4月18日
ジャイアンツ
三島 (7)
○6-0
○7-2
三島
4月22日
スワローズ
高木 (5)
○2-0
○4-1
高木
4月25日
ジャイアンツ
浅間 (3.1)
○12-6
○14-9
舩木
4月29日
スワローズ
戸部 (6)
○10-0
○13-2
戸部
5月1日
ファイターズ
三島 (5)
○8-1
○10-5
三島


[6]選手起用の方針 2004.5/3

 5月1日、マリーンズ2軍は開幕以来の鎌ヶ谷に戻ってきた。
 3、4月を終えて11勝11敗、とりあえずの目安と定めている5割ラインをキープしている。奇しくも相手のファイターズもここまで11勝11敗、気持ちの上でも成績の上でも、今日から再び仕切り直しといった条件が揃っていた。
 「開幕から10試合ぐらいはいろいろな選手を使って、その後はある程度固定したメンバーで戦いたい」これは開幕日に選手起用について尋ねた時のハイディ古賀の答えだ。
 「どんどん引き延ばしているな」と認める通り、選定期間は未だに続いている。
気が付けば、開幕からすでに20試合以上が経過していた。

 誰を試合に使うのか。期待をかけている選手には多くの経験を積ませたい。その一方で、あぶれ出すことがないように多くの選手を万遍なく出場させたい。40人近い選手を抱えるニッポンファームにおいて、選手起用は常に頭を悩ます問題だ。
 例えば投手起用においても、試合展開に関わらず予め決められていたかのように投手交代がなされる場面が多く見受けられる。各投手の明確な役割分担というよりは、より多くの投手を使いたいがための交代。勝負に対する執着心がそこにはない。その起用が原因で試合に負けたとしても、育成という大義名分がある限り采配ミスを咎められることはない。
 「育成>勝敗」という日本では慣例化した不等式はそこから生まれている。

 アメリカでは選手起用に対する迷いがない。
マイナーリーグにおける各チームのロースター(選手登録)は大方24、5人といった少なさだ。
投手であれば、先発の5人とクローザーの1人は確立されている。中継ぎは残りの6、7人が務めるが、ローテーションを組んで2、3試合に1回の割合で登板することになる。
 野手のスタメンは、捕手を除けば10人程度なので、ほぼ固定された顔触れが並ぶ。特に「プロスペクト」と呼ばれる若手の有望株は徹底的なまでに起用され続け、試合の中で技術と精神力を養っていく。
 毎日のように組まれる試合日程と過酷な移動を考えれば、もう少し選手数が欲しいところでもあるが、「選手は試合の中で成長する」という考え方が一般的だから、少ない人数で数多くの経験を積ませることを重要と捉えている。選手自身も常に試合に出ることが出来るので、出場機会が少ないことでの不満を口にするようなこともない。
 アメリカでは「実戦が何よりの鍛練の場」という意識が全チームに浸透している。

 アメリカ球界で後にも先にも唯一の日本人監督を経験したハイディ古賀が固定メンバーにこだわる理由。それは「ゲームがすべての起点」と本人が語るように、選手は試合の中で知恵を養いながら成長するという思想が根底に流れているからだ。
 最初の期間で目にかけた選手を選び出し、彼らを「プロスペクト」と捉えて重点的に鍛えながら戦っていく。アメリカのように少ない選手数であれば選定は特に必要ないが、日本のように多くの選手を抱えている現状でハイディ古賀が導き出したのがこの方式だった。
 もちろん可能な限り多くの選手を試合で使いたい。しかし選手全員に良い顔を振り撒いていては仲良し野球クラブで終わってしまう。仮に出番が減少する選手が現れるかもしれないが、彼らは数少ないチャンスを活かしてアピールしていくしかない。

 ファームの育成における重点課題は「1軍で通用する選手を作り上げること」にある。それならば、全選手の力を均等に30高めることに労力を惜しむよりも、一握りの有望株の力を100引き上げることに特化したい。さもないと、1軍に上がっても守備要員や代打専門でそこそこの役割しか務められない選手が続々と輩出されてしまう。
 突出した力を備えたスター選手よりも埋没化したベンチプレイヤーばかりでは、当然チーム力は減退する。マリーンズの野手が陥っているのは、まさにこの負のスパイラルだ。1・2軍間を行き来している間に若手の域を脱し、レギュラーに定着出来ずに年齢を重ねてしまった中堅組の多さがチームの首を締めている。
 特に近年のマリーンズで「エブリデイ・プレイヤー」がどれだけ誕生しただろうか。ベテランと外国人に依存している状況は今に始まったことではない。ファームから叩き上げでレギュラーの座を掴んだ選手は、1994年入団の福浦和也を最後に久しく現れていない。

 そんな野手の状況の中で内野手のメンバーが固定されてきた。
3年目の今江敏晃は8試合目となる4月7日のシーレックス戦からフルイニング出場を続けている。本人には疲れの色も見えるが、首脳陣の期待の大きさを感じ取っている。開幕を6番で迎えたが、今や4番サードは今江の指定席だ。
 西岡剛・早坂圭介の2年目コンビはニ遊間に定着している。西岡はスイッチ転向による右打席、早坂は守備という課題が残っているが、彼らの類稀なるスピードとセンス溢れる動きにはキレがある。

 一方で外野手は熾烈な争いだ。
 ファームで3割以上の打率を残し打撃10傑入りしている曽我部直樹、寺本四郎でさえも万全たるレギュラーとは呼べない。
 1軍では32打数3安打と散々の出来だった立川隆史も2軍では本来の力を発揮しているし、同じく1軍でもプレイした於保浩己も走攻守に優れた能力を示している。
 2年前のドラフト1位・喜多隆志も4月24日のジャイアンツ戦でサイクルヒットを記録するなど持ち前の打撃の調子が上がってきた。
 故障で出遅れた垣内哲也もパワーを見せ付けて「まだまだ老け込む年齢じゃないよな」とハイディ古賀を唸らせる。
 当初の計画通りに進んではいないが、これは嬉しい誤算だろう。若手・中堅・ベテランの彼らが6者6様の個性を発揮して2軍の中では高いレベルで凌ぎを削っている。誰をレギュラーにするかは決められない。さらに一塁手のユウゴーがこの争いに割って入りそうな状況だ。

 ゴールデンウィーク日程で最長となる5連戦が始まった。
 先発投手を5人は用意したいところだが、三島輝史、浅間敬太に続くのは中3日の戸部浩、残りの2戦はまだ決まっていない。本音は「雨で1日流れて欲しい」と言ったところだ。
 投手陣のやり繰りは一時ほどの深刻さではないが、厳しいことには変わりない。故障者の復帰に際し「そろそろローテーションを組むことを考えようかな」と目論んでいたが、加藤康介の剥離骨折、田中良平の再度の故障、というアクシデントが相次ぎ構想はご破算に。
 しかし、黒木知宏と小野晋吾との入れ替わりで降格してきた長崎伸一・田中充は1軍経験者としての自信と実力を見せ付けている。内竜也・セラフィニと合わせて、勝ちゲーム用のリレーにおける手駒は豊富になった。

 この週末の試合を1勝1敗で終えたマリーンズ2軍。
1試合目は吉崎勝を打ち崩し大勝、2戦目は正田樹に手が出ず3安打完封負け。開幕2戦をフラッシュバックさせるかのような浮き沈みの激しい戦いを展開した。
 それは5割ラインを浮沈するチームの勝敗と重なり合う。


[外野手6人のここまでの成績]

試合数(スタメン数)
打席数
平均打席数
打数
ヒット数
打率
垣内哲也(33歳)
12(6)
31
2.58
21
7
.333
曽我部直樹(32歳)
19(18)
77
4.05
67
23
.343
於保浩己(28歳)
14(9)
48
3.43
42
12
.286
立川隆史(28歳)
9(5)
24
2.67
23
9
.391
喜多隆志(24歳)
21(13)
59
2.81
54
15
.277
寺本四郎(23歳)
21(16)
72
3.43
65
20
.308
記録は5月3日現在(25試合目まで)