2004.4.7 Expensive! スタンドの声を聞いて ヤンキース日本開幕戦。日本メディアに加えアメリカ本国からも多数のメディアが来日したため、我々Ballpark Time!は取材パス申請をはじかれてしまった。そのため自腹でチケットを購入しての取材(観戦?)となった。 申請をはじかれたのが3月中旬のことだったので、それから慌ててチケットを探すはめになった。最初は知り合いの関係者をたどるもやはり人気のヤンキース戦、まったく手に入らない。一般販売もすでに完売しており、奥の手として金券ショップを走り回り、チケットオークションのサイトをのぞいた。(決して良いことではないのだが、背に腹は変えられない…)運良く金券ショップで定価の\1,000増で手に入れることができた。 我々メディアはどんな試合も取材パスで入場でき、ゲームチケットも主催者から前もって購入できる。今回、チケット入手に走り回ったことで、この仕事(=メディア)に就く前のことを思い出した。ファンはチケット入手のために奔走するのだ。筆者自身も学生時代はそうだった。しかし以前からこのコラムでも書いてきたがこの金額はあまりにも高すぎる。筆者の席は\7,000(定価\6,000)のC席。東京ドーム2階席の最上段から4列下の席で、当然、選手は豆粒ぐらいにしか見えない。しかも席間が狭い東京ドームでは身動きすらとれず、不自由な思いをしながら試合を見た。ヤンキースを日本で見れるとはいえ、“適正価格”とは感じなかった。 開幕戦に先立って行われたジャイアンツ対ヤンキース戦のこと。(この試合のチケットは正規に入手できていました。念のため)試合は初回に松井秀喜の本塁打などでリードを奪ったヤンキースの圧勝に終わったが、試合終盤、松井を打席に迎えたジャイアンツ岡島が四球を与えた時のことだ。「岡島、金返せ! いったいいくら払ってると思ってるんだ」。スタンドのあちこちから怒声がわき起こり、ブーイングがドーム内にこだました。それまではジャイアンツがチャンスを迎えれば拍手をしていたファンまでそうだった。 主催者サイドにはこういった生の声は届いているのだろうか。いつもVIP席で観戦している人たちには決して分からないと思う。主催者、そして球界関係者は一度で良いからスタンドに座り、ファンの声に耳を傾けて欲しい。そういえば現サッカー協会キャプテン川淵三郎氏はJリーグ・チェアマン時代に各試合スタンドの応援席で観戦していた時期があった。野球界はプロとしては大先輩であるが、そういった姿勢は取り入れていって欲しいものだ。 今回は様々な話題がありこの金額でもチケットは完売した。だがそれに味をしめて同じことを繰り返せば、ファンがソッポを向いてしまう日がくるのではないか。ファンとは正直なものなのだ。 2004.4.1 Marines or Submarines? マリーンズが勝つ日は? 2004年開幕戦は西武ドームでライオンズ対マリーンズ戦を取材した。松井稼央頭のメッツ移籍で若手の台頭が望まれる常勝ライオンズとボビー・バレンタイン新監督をはじめ充実した戦力補強を行ったマリーンズ。実に楽しみな対戦だった。5-3の結果以上にマリーンズの良い部分ばかり目立った感じに終わった。 中でもこの試合で一番印象に残ったのは、試合前の例年と変わらない退屈なセレモニー終了時だった。マウンド後方に並んでいたマリーンズ選手たちはダグアウトへ向かうプラカード係の先導を無視し、バレンタイン監督指揮のもとレフトスタンドのマリーンズ・ファンのもとに駆け寄った。 前回マリーンズ監督を務めた95年もそうであったがバレンタインは周囲の選手や関係者、そしてファンを乗せるのが非常にうまい監督である。オープン戦期間中からマリーンズは非常に明るく、「ひょっとすると…」という雰囲気もあった。そしてシーズンインにあたりファンへの想いを形にした。「君たちと一緒に戦うんだ。そして勝つんだ」と。 パ・リーグは今年からプレーオフ制を導入した。3位以内に入れば優勝の可能性もある。新庄剛志の日本復帰もあり世間の感心も大きい。プレーオフ制は賛否両論が何であれ実践してみてダメであれば止めれば良い。これまで注目すらされなかったパ・リーグ全体が盛り上がることが必要だ。その中でも今年のマリーンズはきっとおもしろい野球を魅せてくれるはずだ。 以前」Ballpark Time!誌上で「マリーンズはなぜ勝てないか」という連載企画(B-Time! Vol.3〜5)を行ったが、もしかすると「マリーンズが勝つ日」は意外と早くやってくるかもしれない。 2004 スプリング・キャンプ バージョン[特別編] 2004.3.6 カージナルス対マーリンズ@ジュピター(Jupiter) 「みなさん、田口は元気です」 2004年のキャンプ取材はジュピターのロジャーディーン・スタジアムからスタート。同球場で共にキャンプを行うセントルイス・カージナルスとフロリダ・マーリンズの直接対決に大勢のファンが球場に詰め掛けた。 まず驚いたのはマーリンズ・ファンが圧倒的に多いこと。それもそのはずジュピターから車で2時間ほど南下すれば本拠地プロプレイヤー・スタジアムがある。昨年のワールドチャンピオンも日本ではいまだ知名度が低いが、フロリダ州では他を寄せつけない人気を誇るのだ。(北西部のタンパ周辺にはヤンキース・ファンも多いが…) 新球場建設計画も絡み“マイアミ・マーリンズ”への改名も検討されているが、フロリダのままで良いのでは、と感じさせられたた。 試合前、田口壮のもとを訪れ「日本人メジャーリーガー」を手渡すと、ただでさえ大きい瞳をさらに大きくして喜んでくれた。前回キャンプで会ったのはメジャー挑戦を果たした02年。(Ballpark Time! Vol.4 「Sweet Smell in Florida」) 当時の期待と不安の入り交じった様な表情と異なり、充実感溢れる表情に見えたのは気のせいだろうか。これまでの2年間メジャーとマイナーを行き来し、アメリカへのアジャストと自らのスキルアップを計ってきたことが自信につながっているのだろうか。 試合途中から出場した田口が打席に立つたび「SO!」という温かい声援が浴びせられた。カージナルスの一員としてファンからも認知されつつある田口の活躍が楽しみだ。 田口壮オフィシャルHP:http://www.taguchiso.com/ 2004.3.7 ドジャース対メッツ@ベロビーチ(vero Beach) 「ドジャーブルーを身にまとったノリ」 ケガの回復が順調なメッツ・リトル松井の出場も噂され多くの日本メディアが集まった。(その中にはタイガース星野仙一シニアディレクターの姿も。カジュアルな服装にサングラスをかけドジャータウン内を歩く星野氏はバッチリときまってました) 残念ながらリトル松井は出場せずも、この試合では野茂英雄、石井一久の2人が登板。ローテーション投手が一度に見られるとあってほぼ満員のファンで埋まったホルマン・スタジアムはおおいに盛り上がりをみせた。 3月上旬ということもあり2人ともまだまだ調整段階。開幕を目標にあと半月かけピークに持っていくはずだ。報道では「野茂、石井 開幕ピンチか?」などと煽られていたそうだが、心配しないで見守ろう。今年もきっとやってくれるはずだ。 もちろん気になるあの男も取材した。バファローズ・中村紀洋。金髪とドジャーブルーのジャージがフロリダの日射しのもと思いのほかマッチ。本人の楽しそうな表情も印象的だった。 ところで渡米前から中村を批判する記事をよく目にした。「足のリハビリなら日本のオープン戦でしろ」「メジャー移籍の布石だ」などなど…。 様々な意見があるだろうが、あの楽しそうな中村の表情を見ただけでドジャース・キャンプに参加して良かったと思う。ここ1、2年は足の故障や、チームの低迷もありフィールドで辛そうな姿ばかりだった。中村という選手は気持ちでプレーするタイプ。そんな男がモチベーションを見出せないままでプレーしていたように見えた。 「オープン戦はあくまで有料試合なのだからチームの顔として試合に出る義務がある」という意見も分かる。しかしながら日本の場合、有料試合とはいえ演出面や営業面などシーズン中に行うことをほとんどやっていない。選手サイドもあくまで調整の場としてハードなプレーは行わないし、アメリカのように試合後半に出場機会を与えられた招待選手たちが生き残りをかけたシビアな戦いを行う場でもない。そういったことを踏まえたうえで考えると、アメリカでモチベーションを高めてもらいシーズン中に爆発してもらった方が得策ではないだろうか。それに以前から多くのベテラン選手はオープン戦中の特別待遇を許可されていたはず。3月上旬のこの時期であればそれが海外であろうが何の問題もないはずである。 「メジャーはどんな選手でも憧れですよ」と以前、中村は語ってくれた。(Ballpark Time! Vol.4 「Die Hard」) 2004年春、メジャーという禁断の果実に触れたこの男がどんな変身を魅せてくれるのか。今年の中村紀洋、そしてバファローズはとても楽しみだ。 2004.3.8 アストロズ対タイガース@キシミー(Kissemee) 「トモ大家が推薦するナックルボーラー」 前日の先発はロジャー・クレメンス、前々日はアンディ・ペティット。このオフ注目を集めた二人の投手はベンチ入りすらしなかったが、一人のナックルボーラーを初めて見ることができた。 「ヒューストンのジャレット・フェルナンデスって知っています? 凄いナックル放るんですよ。ウエイクフィールド(レッドソックス)の次はこいつがきますよ」 以前、エクスポズ大家友和が教えてくれたフェルナンデスがこの日の2番手に登板した。1イニングだけしか見ることができなかったが、何の変哲もないスローボールに見える球にどのバッターも凡打を築いていた。 大家とフェルナンデスはレッドソックスのマイナー時代に一緒にプレーした。しかも遠征先では常にルームメイトだったという。大家は多くを語らなかったが2人でメジャーを夢見て語り合い、切磋琢磨したことは容易に想像できる。 エクスポズとアストロズ。同じナショナル・リーグでメジャーに挑んでいる。今シーズン、国境を挟んだカナダとアメリカ中南部で彼ら2人はどんな活躍をみせてくれるのだろうか。 2004.3.9 エクスポズ対ドジャーズ@ビエラ(Viera)「相手を思いやる心」 多くの投手が登板日は独自の調整があるため、フィールドに出てくることは少ない。またたとえ見かけても、集中力を高めているため声をかけるのは控えている。(ドジャース・石井一久のように登板30分前までメディアと話したりしてリラックスしている選手もいるが) この日エクスポズは大家友和が先発予定だった。大家に話を聞くため、遠征に帯同せずビエラに残って調整中の彼のもとを前日に訪れた。 2月に発足した大家ベースボールクラブのこと、現在の調子のこと、「34」にした背番号のこと…。わずか15分ほどであったが有意義な話を聞けた。 数日前、日本のあるスポーツ新聞社が大家の批判記事を掲載した。「メディアに対してきちんと対応ができない。人間としての成長がない」という内容だった。もちろんその話題も出た。 大家という選手は取材をおこなう立場からすると、取材対象として緊張する相手だ。こちらの質問には常に熟考し、時間をかけ答を返してくれる。しかし、ひとたび抽象的な質問をしたならばその意味を問いただされる。時には厳しい口調で。それは質問の意図をしっかりと消化しないと答を出すことができないからにほかならない。 また取材のタイミングやその際の礼儀を大切にする選手だ。そこには「調整の邪魔をして欲しくない」というアスリートとしては当然の思いがある。これまでの感想では、適切なタイミング(練習終了後など)で取材したい意図をきっちり伝えれば、それに対してはしっかりと答えてくれる選手だ。逆に言えば大家ほど取材しやすい対象もいない。 今回の件も登板直後にいきなりやってきて「インタビューさせてくれ」ということだったそうだ。登板直後がどういう時間なのかというのは、少しでも野球をかじったことのある人なら分かるはずだ。そういう経緯があったにも関わらず「大家、取材拒否」という話になっている。どういう意図でそのような報道がなされたのか理解に苦しんだ。相手のことを思いやる。社会では常識のこの行為が当たり前にできたならば今回の件は起こりえなかったことではないか。 報道の先にいるファンはメディアを通じてしか選手の日常や人間性は分からない。今回の件で大家に対し良くない印象を抱いたファンも少なくないはずである。 メディアに携わる立場にあるものとして自戒を込めて書いてみた。気をつけなくてはならない。 2004.3.10 パドレス対アスレチックス@ピオリア(Peoria)「パドレス投手陣」 パドレスに移籍したデビッド・ウエルズの取材をした。バイクが趣味で武勇伝も数知れず。スキンヘッドの風貌もあり声をかけるのに一瞬たじろいだ。 「何、日本から来たのか? この後、まだトレーニングがあるが少しだけなら大丈夫だ」 見かけとは異なり、紳士的に取材に応じてくれた。人は見かけによらないものだ、と改めて感じさせられた。 この日は9回に大塚晶則が登板し三振2つを奪う好投をみせた。パドレスにはトレバー・ホフマンという屈指のクローザーがいるため、その前で投げるストッパーが予定されている。これからがまさに正念場だ。 ブルペンからスライダーの制球が定まらず苦労していた。しきりにボールの縫い目を気にしていたがその辺はやっていくうちにアジャストできるはず。印象的だったのは周囲からとても可愛がられていたこと。「アキ! アキ!」と声をかけられ、ブルペン捕手とは何度も拳をぶつけあうオリジナルのハイタッチを行っていた。 「メジャーで成功する1つの鍵はいかに早く周囲にとけ込むか」とマリナーズ・長谷川滋利も語っている。そういう意味では大塚も1つずつハードルをクリアしているようだ。 2004.3.11 カブス対ロッキーズ@メサ(Mesa)「カブスの3本柱」 リーグ・チャンピオンシップで明暗を分けた“呪いのボール”も破壊し、今年こそワールドチャンピオンを狙うシカゴ・カブス。メジャー屈指の投手陣たちに話を聞いた。取材時の印象を書いてみたい。 グレッグ・マダックス 16年連続15勝のナンバー1投手。しかしこの時期のマダックスは「陽気なおじさん」だった。練習中のメニューはしっかりとこなしつつも、少しでも間が空けばしゃべる、しゃべる。そんなマダックスに球種の握りを写真に撮らせてもらうように頼んでみた。 「球種の握りはシークレット。右手も見せられない。だけど左手ならばいくらでも構わないよ」という何とも人を食ったような答え。遠慮なく左手のひらを撮影させてもらった。 ケリー・ウッド “次代のクレメンス”とも言われる本格派投手。同性の筆者から見てもかっこいい男だが、なかなかのイタズラ好き。練習中にチームメイトの背後から忍び寄っていきなり耳を引っ張るなど、お茶目な一面もみせてくれた。 マーク・プライヤー 03年のカブス躍進の立役者。キャンプ序盤で足を故障し別メニュー調整が続いていたが、そろそろ戦列に復帰できそうだという。ファンのサインにどの選手より多く応えるなど、誰からも愛される選手だ。手のひらを撮影する時もわざと手を動かしフォトグラファーをからかっていた。 また、驚かされたのは立派な下半身だ。ふくらはぎの筋肉が異常に発達しており、あのキレの良い球を放る理由の一端がそこにある気がした。 2004.3.12 (昼) マリナーズ対カブス@ピオリア(Peoria)「集中力」 昨日、取材を行ったグレッグ・マダックスが先発した。筆者はこれまで彼の登板をライブで見たことがなかった。そのため恥ずかしい話だが、どこが優れているのか、はっきとりと分からないでいた。(もちろんずば抜けた制球力や、すべての投球を微妙に動かしていることは知ってはいたが…) 自らの目で確かめるためネット裏の前方席についた。 やはり誰もが言う通りの素晴らしい投手だった。調整中ということもあり7、8割ぐらいの出来だったと思うが、スピードはなくともコーナーを突く制球力と鋭いチェンジアップで多くの三振を奪っていた。 中でも特に驚かされたのは「ここという時の集中力」。4回表2アウトからイチローにヒットを打たれ、盗塁とエラーで3塁まで進まれた時だった。表情は一変し、実戦さながらの顔つきになった。1球ごとに捕手の返球をマウンドを降りながら受け取り、投球には更に磨きがかかった。もちろん次のバッターをしっかりと打ち取り0点に押さえた。 まさにプロの凄みを感じさせられた。メジャーという高い技術を持った集団の中で長年に渡り確固たる地位を保ち続ける男の神髄の一端を見た気がした。実に有意義な一日であった。 2004.3.12 (夜) アスレチックス対@レンジャース(Phoenix) 「今年も凄いA's投手陣1」 今年もア・リーグ西地区の大本命、オークランド・アスレチックスの不動の三本柱バリー・ジート、ティム・ハドソン、マーク・マルダーの取材のためフェニックス・ミュニシパルスタジアムへ。この日は運良くジートが先発し、キレ味鋭いストレートとチェンジアップでレンジャース打線を手玉にとった。 試合前、クラブハウスでハドソンに声をかけると「あと少しワークアウトがあるから、15分経ったらダグアウトへ行く」と言い残し、トレーニングルームへ消えて行った。ダグアウトへ現れたのは約束通りきっかり15分後だったのに驚かされた。 「とびきりのスピードがあるわけじゃないから、とにかく慎重に打者と勝負することを心がけている。目先を変えるために2種類のスプリッドフィンガー(フォークボール)を持っているのもそのためだよ」と2種類の握りを見せてくれた。 きれいにそり上げたスキンヘッドに多くの汗を浮かべながら答えてくれた。ハドソンを支えるのは豊富な練習量。今年もしっかりと成績を残すに違いことを確信した瞬間だった。 2004.3.13 (昼) ロイヤルズ対ブリュワーズ@サプライズ(Surprise) 「クラブハウスの出来事」 ロイヤルズのクラブハウス内で後ろから肩を叩かれた。振り向くとマイク・スウィーニーが立っていた。彼とは00年の日米野球時に知り合い、オールスターゲームやキャンプで何度も会ってはいたが、まさか顔を覚えていてくれたとは驚いた。立ち話だったが彼自身の調子や、チームのことについていろいろ話をした。最後に「今年のロイヤルズに期待をしてくれ」と語っていた。 スウィーニーと話した後、クラブハウスを見渡してみた。なるほど、伸び盛りの若手や百戦錬磨のベテランがほどよくミックスされている。 松井秀喜を押さえ03年ア・リーグ新人王を獲得したエンジェル・ベローアはヘッドフォンを耳に踊りまくり、強打のセンター、カルロス・ベルトランはじっとロッカーの前に座っている。今年加入したベテラン捕手ベニート・サンチアゴの左腕には大きなマリア様のタトゥーが誇らしげに輝き、MVP男フォアン・ゴンザレスは誰をも寄せ付けない雰囲気を醸し出していた。 ここ数年、ア・リーグ中地区は混戦が続いているが、今年のロイヤルズには「ひょっとすると」という期待を抱かせる選手が揃った。実に楽しみなシーズンだ。 2004.3.14 アスレチックス対ダイヤモンドバックス@フェニックス(Phoenix) 「今年も凄いA's投手陣2」 試合前にバリー・ジートに話を聞く。技術もそうだが、何より素晴らしいのは人間性の良さだ。こちらの質問に対しては1つずつ丁寧に答えてくれ、笑顔を絶やすこともない。ギターとサーフィンが趣味という23歳。“かっこいい”男であった。 その後、マーク・マルダーを探すも見当たらない。A'sの広報担当者に聞いてみると「みんな良く練習するが、マルダーに勝る者はいない。ハードワーカー、いや“ワーカーホリック”(仕事中毒)だよ。今日は登板の予定もないし、おそらく会えないと思うよ。ずっとトレーニングルームにこもりっぱなしだよ」と笑っていた。そうこうしている間にクラブハウスが閉められ、結局マルダーには会えなかった。 ア・リーグ西地区のみでなくメジャーリーグでも屈指の投手陣。どんなに結果を残そうとも妥協なく練習をおこなう彼らの姿には感動を覚えた。メジャーリーグとはやはり凄い場所である。 2004.3.15 ジャイアンツ対ダイヤモンドバックス@スコッツデール(Scottsdale) 「伝説の男との出会い」 試合前のジャイアンツ・クラブハウスに一人の男がいた。オレンジ色のシャツを着たその男のもとをジャイアンツの選手たちが入れ替わり訪れ、記念撮影やサインをしてもらっていた。彼こそはジャイアンツ伝説の男、「THE CATCH」で有名なウイリー・メイズだった。ジャイアンツのエグゼクティブの地位にいることは知っていたが、こんな場所で会えるとは思わなかった。 「よく我がジャイアンツの取材に来てくれた。君は僕のことを知っているのかい? 知っていてくれるなんてうれしいよ。ジャイアンツに新庄(剛志)がいた頃は日本人もたくさん見かけたんだが今は少ないな。今年のジャイアンツはとても良い状態に仕上がっているから、ワールドチャンピオンも夢じゃないんだよ。次はぜひサンフランシスコに来てくれ。心から歓迎するよ」 緊張していた筆者を思いやってか、実にやさしく話をしてくれた。別れ際にがっちりと握手までしてくれた。その手は、ゴツゴツしてとても80歳のものには感じられなかった。いくつもの伝説を作り出してきたその手の感触が今も残っている。 10日間のキャンプ取材が終わった。今、フェニックス空港でこの原稿を書いているが、となりに一組の親子がいる。カブスのキャップをかぶった少年は大事そうにクラックバット(試合中にヒビの入ったバット)を抱えている。「カブスの選手にもらったんだ」と満面の笑顔を魅せてくれた。 取材を通じて感じたが、この期間中は実にノンビリとした雰囲気がある。球団のメディア対応もそうで、フォトグラファーにまでクラブハウスに入れるパスが発行されるなんてことはシーズン中ではありえないことだ。 まもなく4月。もちろんしっかりとした調整は行われているが、162試合のサバイバルが始まる前のちょっとした息抜きという感じすらする。ファンもその様子を心から楽しんでいる。 機会があればぜひスプリング・トレーニングに足を運んでみてください。メジャーリーグの凄さ、楽しさ、温かさなど様々なものを体感できるはずです。 ところで筆者は航空券の手配がうまくいかず、フェニックスから帰国するのにニューヨーク経由となってしまいました。しかもフェニックス・ニューヨーク間は夜間飛行の通称「レッドアイ」。(寝不足で目が赤くなることからそう呼ばれる) メジャーリーガーも経験するというレッドアイを体感し、今回のキャンプ取材を終えようと思います。 2004.2.18 Expensive? ヤンキース日本開幕戦 ジャイアンツ・キャンプ取材で宮崎を訪れた。2年前にも松井秀喜の取材(Ballpark Time! Vol.4)で訪れて以来だったが、あまりの変わりぶりに驚かされた。平日の昼間とはいえファン、そしてメディアの数が激減しているのだ。(ファンの数はおそらく以前の5分の1ぐらいではないかと感じたが…) 近年、よく言われる「野球人気の低迷」かというとそうでもないらしい。今春から同じ宮崎市内にキャンプ地を移したホークスキャンプは連日大盛況だという。常に地元九州を意識してきたホークスの営業戦略が実を結び始めているのではないだろうか。 夜、市内の居酒屋で出会った人から気になる話を耳にした。その人は3月末に行われるヤンキース日本開幕戦のチケットが獲れたので上京する予定だという。 「僕の席はS席だけど1枚¥25,000は高すぎだよ。それだけで宮崎から東京まで往復できちゃう。今回だけで10万ぐらい使っちゃうから、次のボーナスまで財布が空ですよ。でもアレックス・ロドリゲスまで見れるのはうれしいけどね」 松井の凱旋、名門ヤンキースの開幕戦など価値があるゲームであることは十分理解できるが、確かにチケット代金は高いと感じる。地域密着を大事にするMLBが日本開幕戦を行うのは「メジャーの国際戦略」という大義がある。しかしこの値段では地方のみでなく、関東在住のファンさえ気軽には足を運べない。日本の末端を支えるファンの多くはテレビでの観戦を余儀なくされるだろう。 一昔前、ジャイアンツ戦はプラチナチケットと呼ばれた。価格は高騰し、企業接待などで利用する人も多かった。ヤンキース開幕戦のチケット代金の高さが、以前の「ジャイアンツ・バブル」と重なって見えた。たどり着いたその先が今キャンプの状況だとしたら…。 もちろんビジネスも大事です。しかし地道に一歩ずつ伝えていくことこそ大事なことではないのか。メジャーリーグ関係者のみなさん、いかがなものでしょうか。 2004.2.11 THE DREAM 高津臣吾、シカゴへ 高津臣吾のシカゴ・ホワイトソックス入団が決まった。アメリカ国内のFA市場の動向をにらみながらだったため、思うように進展しない交渉に歯がゆい思いをしていただろう。だが念願がかないまずは良かったと思う。 実は筆者は年末年始と2度、高津を見かけている。 最初に見かけたのはドジャース石井一久のインタビューに訪れたフジテレビの楽屋だった。ちょうどメジャー挑戦を表明したが、交渉が思うように進まなかった時期である。石井と同じ吉本興行にマネージメントを依頼している関係でそこにいたのであろう。気を許せる仲間と一緒にいても、何となく元気がなかったように見えた。 そして2度目はホワイトソックス移籍が決まった直後の神宮室内練習場。スプリングトレーニングに向けて懸命に自主トレを行っていた。ハードなトレーニングを自らに課していたが、表情はとても明るかった。最初に見かけた時とはまるで別人のように感じられた。 「高津はメジャーで成功するのだろうか?」 連日、新聞紙上では議論されている。しかし別人のような高津の表情を見せられ、感じた。高津はすでに1つの成功を収めている。メジャーで成績を残すかそうかは、あくまでその後のオプションにすぎない。 まもなく制球力抜群の横手投げ投手がシカゴのマウンドに登場する。ニューヨークの2チームだけでなく、歴史あるシカゴのこのチームにも注目だ。 文中の石井一久インタビューは、2月25日発売Ballpark別冊「日本人メジャーリーガー」(成美堂出版)に掲載されます。 2004.2.4 MR. SWALLOW 古田敦也 「こんな格好でホンマ良いんですか?」 写真撮影にジャージ着用をお願いしていた。そのため上はスワローズのジャージに下はショーツという何ともおかしな格好で登場した。緊張気味だった我々は一瞬にして彼のペースに巻き込まれてしまった。 古田敦也のインタビューを行ったのはキャンプイン直前のことだった。デビュー以来スワローズを支え続け、そして日本を代表する捕手として君臨してきた。リアルタイムでその活躍を目の当たりにしてきた筆者にとっては思い入れの深い選手のひとりだ。 03年シーズン終了後も休むことなく身体を動かし続けてきたことで、体調は非常に良いという。そのせいなのか、まだまだ戦闘モードに入っていないからか、取材中とても穏やかな表情であったのが印象的だった。また坂本弥太郎、高井雄平など期待を寄せる若手投手の話になると本当にうれしそうにしていた。 開幕前は優勝候補に挙げられることの少ないスワローズだが、毎年のようにAクラス争いに加わり、そして優勝もしてきた。莫大な補強費をかけて優勝を狙うチームとは対称的な戦い方で勝っているのがおもしろい。 「うちはそれが持ち味ですし、それでずっとやってきたんで選手も慣れてますよ。手を代え、品を代え、何が出るか分からない野球だから面白いと思いますよ」 「今年はジャイアンツやタイガースが強いと言われていますが、一泡ふかせてやりますよ」 眼鏡の奥の優しい瞳が、この時ばかりは勝負師のそれになっていた。04年の古田、そしてスワローズは何かをやってくれそうだ。 このインタビューはスワローズ・オフィシャルペーパー「ONDO」3月20日号に掲載されます。入手先など詳細はスワローズ・ホームページ www.yakult-swallows.co.jpまで 2004.1.28 Field of Dreams 大家ベースボールクラブ発足 「トライアウトに参加してくれてどうもありがとう」 95名の参加者とその家族、そして自らを支えてくれるスタッフへの率直なお礼からトライアウトはスタートした。 滋賀県草津市、琵琶湖沿岸にあり古くは宿場町で栄えた町だ。数年前に立命館大学のキャンパスができ、現在は若者たちでにぎわいをみせている。 草津駅から徒歩20分ほどのところに草津グリーンスタジアムはある。両翼98m、中堅122m、外野には砂混同の人工芝が引かれ、磁気回転式スコアボードを持つ実に立派な球場だ。ここが草津リトルシニア(大家ベースボールクラブ)の本拠地となる。 メジャーで2年連続二ケタ勝利という成績を残した大家友和(エクスポズ)は、以前よりチャリティツアーを行うなど社会貢献や地域への利益還元を考えていた。03年シーズン終了後から立命館大学経営学部に通いスポーツ経営学などを学んでいることもあり、地元草津で中学生を対象にした硬式のチームを立ち上げることにした。 興味深いのは学生のインターンシップ制を取り入れることだ。立命館大学と提携し、クラブ運営を通じながらの単位取得というシステム構築を目指す。また、「市民が誇りを持てるようなチームに」という方針から、ゴミ拾いなどのボランティアも積極的に行っていくという。 寒風吹き荒れる中、トライアウトが終了したのは午後4時過ぎ。その間GMの大家はメモをとり、時にはアドバイスを送りながら選手たちを真剣に見つめていた。 「野球を楽しんで欲しい。“楽しい”というのはやはり勝つことから味わえる。そのためにはしっかりとした野球を教えたい。そうすれば勝てる。また野球だけじゃなく、何でも懸命にやることを通じて人間的にも成長して欲しい。そこが一番大切な部分です」 この年代は本来なら野球が一番おもしろいはずの時期だ。しかし現状では間違った指導法が横行し、精神主義などで選手たちが野球を楽しんでいないという現実もある。 自らアメリカで下(マイナーリーグ)からはい上がり、様々な経験をした。大家が草津そして日本球界にもたらすものは決して小さくはない。 現在NPO(民間非営利団体)法人化申請中。形になるのにはまだまだ時間がかかるだろう。しかし草津からの小さな風、そこには大きな夢が溢れている。 2004.1.21 HOW MUCH? チケット代を安く感じたい ヤンキースが日本開幕戦を行うことが正式に発表された。同時にチケットの詳細も発表された。一番高価なS席が¥25,000、外野指定席でも¥5,000という。 名門ヤンキースの来日、松井秀喜の凱旋など話題はつきない。ニューヨークまで足を運ぶ手間ひまを考えればこの値段も、というところなのだろう。ちなみに2004年シーズン、ヤンキースタジアムのチケットプライスは95ドル(約9,975円)〜10ドル(約1,050円)である。(1ドル=105円) 先日、ラグビー「トップリーグ」を見る機会があった。1,300円のチケットで入場した席はメインスタンドの一番端であった。しかしラグビー専用スタジアムの秩父宮ラグビー場においては、スタンドからグラウンドまでわずか5メートルほどの距離。選手たちがぶつかりあう音まで聞こえてきた。あれだけの迫力を感じさせてくれるのなら、1,300円はお得感がある。ぜひまた足を運びたい、と強く感じた。 ところで、いくら手ごろ料金とはいえ、選手の息遣いさえ聞こえないはるか遠くから見たならば、これだけの感動を味わうことが果たしてできたのか。やはり器は大事であると感じた。 日本開幕戦、フィールド上では最高峰のプレーを魅せてくれるはずだ。だからこそ東京ドームの構造が残念でならない。観客席の前には高い金網が張られ、ファールゾーンも広い。プロの醍醐味が損なわれてしまわないかが心配である。 東京ドームでアメリカンフットボールが行われる際にはあの金網も取り外される。競技が異なるので単純な問題ではないだろう。しかし安全上、どうしても必要ならば、どこか別の部分で工夫をしてくれないものか。もしくはプライスを考えても良いのではとちょっと考えてしまう。 人気の格闘技PRIDEはVIP席が¥100,000、A席で¥7,000(PRIDE27参照)もする。正直、(値段が)高いとも感じる。しかし、チケット代金の高さに見合うだけの演出を施してくれる。どこの席からでも試合状況がわかるよう、常時2〜3台のビジョンを設置する。「戦い」というソフトももちろんだが、そんな1つ1つのサービスが人気の理由だと思う。メジャーリーグ人気が高い今だからこそ、ファンの目線の立ったサービスが必要だと思う。 2004.1.14 THE UMPIRE 審判の権威を守ろう セ、パ両リーグとも多くの審判員が契約更改を保留した。様々な理由があるだろうが、リーグと審判サイドの間に溝があることは否定できない。何年か前には審判組合が開幕前にストライキを示唆することもあった。 現場サイドから審判のレベルの低さに対する苦言をよく耳にする。オフシーズンには「珍プレー集」の類においてミスジャッジなどが必ず放送される。審判を取り巻く環境は年々、悪くなっている。そこに審判の権威はもはやない。 1月10日、「JFLレフェリーカレッジ トップレフェリー養成コース」の第1回講習会が開かれた。これは世界的にも数少ないプロジェクトで、日本サッカー協会が若手審判員を直接育てる目的で設立されたもの。トータル3年のプログラム中には技術的、肉体的なものはもちろんだが、審判の歴史や英語習得のため「TOEIC」の受験まで組み込まれている。 サッカー界には国際大会で笛を吹くレベルの高い審判員が何人かいる。「そういう人材が増えることがJリーグの盛り上がりにもつながる」という考えのもと、協会自ら動いているのだ。 野球界でも地道ではあるが独自の方法で審判技術向上を目指す人々もいる。年末、元パ・リーグ審判の平林岳氏らはアメリカ審判学校の権威ジム・エバンス氏を招き、審判講習会を開いた。以前、話を聞かせてもらった際、平林氏は審判の現状に頭を悩ませていた。(Ballpark Time! No.2掲載「最後の決定」) 自ら動いたのだ。 投手がファーストピッチを放る際には審判のコールが必要だ。ゲームを左右する大事な役目を担う審判について、もう少し真剣に考えるべきではないか。サッカー界のように野球機構主導でなんとかならないものであろうか…。 2004.1.7 A Happy New Year! 今年も良いことがありますように ヤンキースの日本開幕戦で松井秀喜が満塁ホームランを含む大暴れ。松井リトル稼頭央はメッツのリードオフとして実力を発揮しサブウェイシリーズは大変な盛り上がりをみせた。 日本プロ野球はセ、パとも大混戦。セ・リーグはタイガースが03年に続き好調を維持するも5ゲーム差の中に4チームがひしめきどこの球場も超満員。プレーオフ導入を果たしたパ・リーグは9月終盤まで出場チームが決まらない。 またプロアマ間の雪解けが一気に進み、プロ選手やOBによる高校球児指導も許可される。アテネオリンピックに出場した日本代表は悲願の金メダル獲得……。 2004年正月、こんな夢をみた。 10年前にさかのぼる。Jリーグが始まる以前にサッカーがこれだけ人気を集めると誰が想像しただろう。野茂英雄がドジャース入団以前にメジャーリーグに興味を持っていた人はどれだけいただろう。何かが変化を遂げるにはそれなりの時間や労力がいる。今、日本野球は生まれ変わろうとしている最中だ。いや、そうであることを望みたい。 年明け早々、日本野球の「今、そこにある危機」を取り上げる記事を様々なメディアで見かける。確かに現状は問題山積みだ。しかし球春前の今ぐらいは、大きな夢を見ていたい。今年もまもなく野球がはじまる。 |