ソウルから野球愛
文・室井昌也
Text by Muroi,Masaya

日韓を行き来し韓国野球を知り尽くした筆者が、知られざる韓国野球の世界をご案内!!

KBO(韓国野球委員会)公認
『2004韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』(小学館スクエア)絶賛発売中!!
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2003.8.29 韓国プロ野球観戦ツアー報告その2

 先週に引き続き、21日(木)から24日(日)に実施した「韓国プロ野球ツアー」のご報告です。
 好天にめぐまれた22日(金)は、昨年完成したインチョン・ムナク球場でSK vs ロッテを観戦。試合開始2時間半前に球場に到着し、球場内の各施設をじっくり見学しました。2000万円をかけてアメリカから最新鋭の機具を揃えたトレーニングルームには、日米の野球に詳しいあるご参加者が、大変関心していらっしゃいました。その他公式記録室や選手ロッカールームなどを堪能した後、練習中の元広島・SKディアス選手とグラウンドでの写真撮影。とてもフレンドリーなディアス選手とのお話や、進呈した各グッズにサインをもらってみなさん大喜び。
 ゲームは2-0でSKの勝利。テンポのいい試合をバックネット裏からみなさん楽しまれていたようでした。
 23日(土)は、朝から強い雨が降り続いた韓国北部。午後には止み、日も差したことから、試合を期待しチャムシル球場へ。グッズショップでお買いものをした後、球場内施設を見学しました。昨日同様、トレーニングルームの充実ぶりに驚く参加者の方々。そこでトレーニング中の、LG・チョインソン捕手と写真撮影実施。室内練習場ではサムソンの野手陣が打撃練習中で、通路でサムソン・イスンヨプ選手とすれ違うと興奮気味の方も。その後、元阪神・サムソンのコジヘン(高山智行)選手との雑談と写真撮影。気さくでユーモア満点のコジヘン選手に、みなさん笑顔が絶えませんでした。
 その間、雨が降り続け残念ながら試合中止が決定。球場を後にしLG球団関係者との交流会へと。ツアーの締めとなった宴は深夜まで続きました。
 今回が初めてのツアー開催でしたが、ご参加者の方々には大変喜んでいただけたようです。次回は「韓国シリーズツアー」を予定していますのでご興味のある方は是非ご参加下さい。
 本誌山岡編集長をはじめ、ご協力下さった皆様へはこの場を借りて厚く御礼申し上げます。次回からは通常のコラムです。
撮影:室井昌也


2003.8.22 韓国プロ野球観戦ツアー実施中!

 現在、当方企画による「韓国プロ野球観戦ツアー」の真っ最中です。今回と次回はその報告にこの場をお借りします。
 21日(木)から24日(日)まで実施のこのツアー。21日夕方にインチョン国際空港に到着後、チャムシル球場に直行。ソウル名物、退勤時間の大渋滞にはまりつつも、球場へ到着。トゥサン vs ヒョンデの観戦を行いました。ゲームはシムジョンスの43号弾を含む4点をとったヒョンデがトゥサンを下しました。
 試合終了後はこのツアーの特典の一つでもある、選手との写真撮影。昨日先発登板した、入来智投手との撮影会がグラウンドで開かれました。この日敗れたトゥサンベンチ前での撮影ということで、大はしゃぎにとはいきませんでしたが、ご参加された10数名の方々は大変喜んで下さった様子でした。
 実は、参加者のみなさんをさらに喜ばせられた出来事が、試合終了前にありました。9回裏、写真撮影に備え、ベンチ裏に向かったのですが、球団側の計らいでベンチ横カメラマン席からの観戦。目の前に控え選手が座り、緊迫した空気が流れる状況にドキドキされた方も多かったようです。その回トゥサンが追い上げて、サヨナラ勝ちとでもなれば、さらに熱気も伝わってきたのですが。
 22日(金)はインチョン・ムナク球場でSK vs ロッテ、23日(土)はチャムシル球場で、LG vsサムソンの観戦となります。両日とも選手との写真撮影、球場内見学、もちろん観戦と内容盛りだくさんです。次回もこのツアーのご報告をさせていただきます。
撮影:室井昌也


2003.8.8 出口なし。

 ロッテのペクインチョン監督がシーズン途中、成績不振を理由に更迭となった。ペクインチョンといってピンとこない人も白仁天と言えば分かる日本の野球ファンもいるだろう。1963年から81年までの19年間、東映-太平洋-ロッテ-近鉄と在籍し、75年には首位打者も獲得。82年の韓国プロ野球発足時には選手兼監督として打率.412で首位打者に。韓国球界発展の歴史に欠くことのできない存在のひとりだ。
 昨年途中からロッテの監督に就任したが、明らかに戦力不足のロッテを立て直すことは出来ず、今年は日本の社会人から森一馬投手を獲得したもののシーズンを前に解雇。またキムヨンファ(光山英和)捕手も5月以降は2軍生活が続き、シーズン勝率2割台、3年連続の最下位、シーズン100敗などロッテの周りには暗い話題ばかりが顔を出してくる。
 このような状態が続いている為、地元ゲームの観客はまばらだが潜在的なファンは多く、優勝した92年には1試合平均19,000人を越す観衆が集まった。「少しは勝ってくれれば応援するのに」という地元プサン市民の期待と、リーグを盛り上げる為にもロッテの上昇は不可欠なのだが、解決の糸口は見つかっていない。
撮影:室井昌也


2003.8.1 日夜、意識を変えるべく。

 日本では18年ぶりの優勝を目前とした阪神フィーバーで盛り上がっているが、前回1985年の優勝以前、阪神の中継ぎエースとして来る日も来る日も甲子園のマウンドに登り続けた男が、今、韓国で後進の指導にあたっている。池内豊氏。今季よりキアタイガースの投手コーチに就任した。
 71年南海ホークスに入団。76年江夏豊投手などとのトレードで江本孟紀投手らと共にタイガースへ移籍。独特のサイドスローから繰り出すシュートを武器に中継ぎとして活躍。82年には当時のセ・リーグタイとなる73試合に登板し、福間-池内-山本和とつなぐ必勝リレーを形成した。引退後はスコアラーや投手コーチ、育成コーチを経て、今季より韓国球界に渡ってきた。
 日本球界出身者が韓国の選手に感じるのは、年功序列が日本以上にはっきりしている為、コーチに言われたことに疑問を感じてもそれに意見することはなく、言われたままにこなしてしまう若手選手が多いことのようだ。「何の為にやっている練習か分かってる?納得して目的意識を持ってやらないと意味がないよ」ブルペンに池内コーチの声が響く。その指導は次第に熱を帯び、試合開始数分前になってもベンチ脇のブルペンで指導が続くこともある。素材は良い、身体能力も高い。ただそれを活かす術を持っていないことをもどかしく思う。球団の日本球界出身コーチに対する期待もその点にあり、個々の意識が変わることが球界全体のレベルアップにも繋がるだろう。
 今季のキアは、チーム防御率は昨年と変わらぬものの、軸となる投手が現れず、トゥサンから獲得したストッパー、チンピルチュンもうまく機能していない為、苦戦を強いられている。過密日程となるこれからの時期、投手の頭数が揃うチームが有利になるだろう。池内コーチが目をかけた投手たちが頭角を表してくると、上位争いはますます面白くなってくる。
撮影:室井昌也


2003.7.25 後半戦のみどころ。

 本誌3月27日発売号のコラムでも書いたが、来季からパ・リーグが韓国プロ野球のプレーオフ制に似た制度を導入する。ここで韓国プロ野球のプレーオフ制をおさらいしてみる。韓国プロ野球は1リーグ制8球団。公式戦終了後、3位対4位で3試合制の「準プレーオフ」、2位対準プレーオフ勝者で5試合制の「プレーオフ」を行ない、1位対プレーオフ勝者で7回戦制の「韓国シリーズ」と進んでいく。パ・リーグと韓国ではリーグ数、チーム数は違うが、Aクラスに入ればシリーズ進出の可能性がある点は同じだ。今季のパ・リーグのように3強が争っている場合はこの制度も活きるだろうが、8チーム中のAクラスでは、4位チームに首位争いをする力が備わっていることは稀だ。
 今季は勝率ではなく勝利数で順位を決定し、51勝のヒョンデが現在1位、それを追うサムソンとSKが49勝。低迷するロッテとトゥサンと除く3チームは、首位争いに加わるのは苦しいが、いずれも4位入りの可能性がある。昨年のLGのように公式戦4位ながらポストシーズンで集中力を見せ、シリーズでもあと一歩のところまでねばった姿を見ると、後半戦は「とにかく4位入り」という戦いになりそうだ。
 この制度は公式戦133試合を戦う意味を問いたくなるが、導入予定のパ・リーグが掲げる「終盤の盛り上がり」という効果はある。4位争いがもつれればもつれる程、ファンの関心は高まる。これから発表される9月以降の日程、過密日程を乗り切れるチームが上位への挑戦権を得ることになるだろう。
 今季の後半戦は、Aクラス入りを賭けた争いと、現在38本のホームランを放っている、イスンヨプのシーズン最多本塁打記録に注目が集まりそうだ。
撮影:室井昌也


2003.7.18 「球宴に思う」

 今年のオールスターゲームは、17日、ハンファの本拠地、テジョンで開催された。球場の周りには歴代MVPの特大バナーや写真展、バーチャル打撃コーナーなどが用意され、各チームのユニフォームに身を纏ったファンたちも集まり、華やかな雰囲気に包まれていた。
 しかし、入場ゲート周辺は大変物々しい空気。空港のような金属探知器でのボディーチェックと荷物検査が観客のみならず関係者にも行われた。その厳戒態勢の理由は、試合開始直前、10人のスカイダイバーがグラウンドに舞い降りるセレモニーの後明らかに。始球式のマウンドに上がったのはノムヒョン大統領だったからだ。過去に開幕戦、韓国シリーズで大統領が始球式を務めたことはあるが、球宴では初めて。試合開始を前に降り始めた小雨の中、大統領のストライクでゲームはスタートした。
 試合は2回、東軍(サムソン・トゥサン・SK・ロッテ)の先発、イムチャンヨン(サムソン)を西軍(LG・キア・ヒョンデ・ハンファ)打線がとらえ、一挙4点を挙げた。その後も加点し、8回東軍がホームラン連続2発で追い上げるも遅く、9-4で西軍の勝利。MVPは決勝打を含む2安打2打点2盗塁のイジョンボム(キア)が意外にも初受賞。93年韓国シリーズ、94年シーズン、そして今回の球宴と自身3つ目のMVP 受賞となった。
 このゲーム、中盤から雨足が強くなり、観客は観戦するのがつらい状態で、打者も徐々に淡泊な攻撃を続け、少々盛り上がりに欠けてしまった。またイニングの合間に行われたストラックアウトとホームラン競争の決勝戦、歌手の祝賀公演がさらに水を差す形となってしまった。アトラクションが韓国らしいといえばそれまでだが、ヤンジュニョクのスイング、キムドンジュのパワー、チョンミンテのコーナーワーク、などなど、個々のプレーだけでも充分に魅せられることをファンも球界も理解していかないと、韓国球界成熟への道は遠くなるだろう。
撮影:室井昌也


2003.7.11 今年の夢舞台。

 今年、オールスターゲームが開かれるのは、ハンファの本拠地・テジョン。テジョンでの開催は19年ぶり2度目だが、プロ球団の本拠地となってからは、初のオールスター開催となる。
 ソウルとプサンのほぼ中間に位置する都市・テジョン。1993年に万博が開催された場所だ。山に囲まれた盆地で、テジョン公設運動場もライトからセンター後方に、木々が生い茂った山の斜面を望むことが出来る。2000年に大規模な改装工事を行ない、グラウンドは人工芝に。場内へ足を踏み入れると、内野座席の鮮やかな黄色と人工芝とのコントラストがとてもまぶしい。
 韓国には珍しく、バリアフリーが徹底されていて、入場から場内の移動が車椅子でも可能なスロープとなっている。他にはトイレ・売店が座席後方にあり、ゲームから目を離すことなく用を足せる。また外野席後方を取り囲むように、テーブルと座席が屋根の下に設置されており、お弁当を食べながらの観戦には最適だ。コンコースには過去の写真などが展示されており、1999年優勝時の様子も感じられる。
 かつてジャイアンツに在籍していたチョンミンチョルは、当時、優勝の立役者だ。韓国球界に復帰した現在もハンファに在籍している。昨年は不調だったが、今季は8勝5敗とまずまずの成績を残している。現ブルーウェーブのクデソンもかつてハンファでプレー。チョンミンチョルはテジョン高校の後輩にあたる。
 7月17日は制憲節で祝日の韓国。オールスター当日は早い時間から、オールドスターと芸能人の野球大会や、数々のファンイベントが予定され、大いに盛り上がることだろう。ただ残念なのは、テジョン公設運動場の収容人員。13,242人と少な目だ。小さなスタンドにぎっしり埋まったファンをどんなプレーで沸かしてくれるか、今年のオールスターゲームも楽しみだ。
撮影:室井昌也


2003.7.04 六冠男、台湾を経て。

 今季も低迷を続けるロッテ。選手層の薄さが否めない現状をなんとか打破しようと、選手と共に汗を流している日本人コーチがいる。石井丈裕コーチ。1992年、沢村賞をはじめとして数々のタイトルを手にし、西武の優勝に大きく貢献した姿が印象深い。昨年は台湾・誠泰太陽で監督まで務め、今季ロッテの投手コーチに就任した。他の日本から渡ってきた選手・コーチが周囲とのコミュニケーションに一歩引き気味になるのに比べ、台湾での経験からか、言葉に頼らずハートで接しようとしている。言葉を飲み込まず思ったことをそのまま日本語で伝える。練習中のグラウンドには石井コーチの声が大きく響き、周辺は自然と明るくなる。かつて西武入団当時、「スイマセン」というその口癖から「ミスター・スイマセン」といわれた腰の低さもあって関係者のウケも良い。
 しかし言葉が通じない不便さはある。マウンドへ向かう際、通訳が同行できないため、微妙なニュアンスが伝わらない。英語メインでの会話にも限界がある。しかし徐々にだが、選手とのコミュニケーションに韓国語が増えた。「パッリパッリ!(速く、速く!)」ノックバット片手に笑顔で叫ぶ。目的意識に欠ける若い選手たちに身振り手振りをくわえ、大きな声で伝える。時には自らバッティング投手も務め、多くの球数を投げ込む。口をへの字にして投げる姿は現役時代そのままだ。
 7月3日現在、ロッテは21勝49敗3分勝率.300。防御率は4.76と昨年とあまり変わらない状況だ。
 「みんな素質はあんだけどなぁ、身体能力は高いんだよ。」首脳陣内の難しい立場の中で投手陣のレベルアップを目指す、石井コーチ。選手個々に目的意識を植付け、少しでもチームを上昇させるよう、きょうも選手と共に汗を流している。
撮影:室井昌也


2003.6.27 大記録達成の舞台

 先週お伝えした、イスンヨプの史上最年少(26歳10ヶ月)通算300号本塁打記録は、22日地元テグでの対SK戦で見事達成された。しかも次の打席に放った301号目は、サヨナラ満塁ホームランというおまけつきで、ド派手なイスンヨプショーとなった。
 記録達成の舞台となった、サムソンライオンズの本拠地・テグはソウル、プサンに次ぐ、韓国第三の都市。今年2月に起きた地下鉄放火事件で地名を耳にしたも多いだろう。今回のゲームではスタンドに入りきれない程のファンが訪れた。テグ市民運動場の収容人員は12000人。注目が集まるゲームになると満員札止めとなってしまう。その度に新球場建設を求める声があがるが、来季イスンヨプがメジャー進出となると、その声もあまり聞かれなくなるだろう。この球場は、夕方1塁ダッグアウトへの西日が強いことから、ホームのサムソンが3塁側に陣取る。よって応援の中心も3塁側の内野席だ。グラウンドは人工芝。両翼95m・中堅117mという大きさをイスンヨプは味方につけたとも言える。パワーでボールを飛ばすと言うより、柔軟さが武器のイスンヨプ。この球場だからホームランを量産できたという点もあるだろう。
 さて、先週記した300号ホームランボールの行方だが、韓国国内では野球ファンならずとも注目を集めている。スタンドとフェンスの間に落ちたボールを、争奪戦の中から手にしたのは27歳の男性。前回お伝えした球団の景品との交換要求には応じず、世論も「交換しなくて当然」と、ボールの主は価値があがるのを待ちつづけるようだ。
 8月21日から24日まで、当誌の協力を受けて実施される「韓国プロ野球観戦ツアー」では日程の都合上テグへは訪れないが、チャムシルでLG-サムソンを観戦できる。韓国では見納めとなるかもしれないイスンヨプの姿や、球場見学・選手との交流も行われる特典満載のこのツアーで韓国プロ野球に触れていただきたい。
撮影:室井昌也


2003.6.20 記録目前の国民打者

 今、韓国球界は、サムソン・イスンヨプのホームラン記録の話題でもちきりだ。現在60試合で30本。シーズン自己最多の54本、そしてアジア記録の55本を破るか?そしてあと2本で通算300号、史上最年少の300号はほぼ確定的、いつどこで打つか?とファンの興味は尽きない。17日からのLG3連戦で飛び出すのではと期待したファンも多かったが、今季チャムシルでは1本も放っていないイスンヨプ、記録は地元テグへとおあずけとなった。残り2本となってからは観客数も増え、投手が勝負にいっても結果として四球となるとお客さんはブーイング。全国民が記録達成を心待ちにしている。20日から月曜日を挟んで6試合続く地元テグでのゲームでは一発が飛び出すのではないだろうか。
 来季からメジャー進出も目されるイスンヨプだけに、今から300号のボールの行方にも関心が高まっている。球団は300号のボールをつかんだ観客に29インチフラットテレビ、直筆サインボール、今季・来季の年間パスポートと交換するとしているが、果たしてファンはそれに応じるかどうか。
 まさに「国民打者」のイスンヨプ。メジャー行きに好意的なファンは多いが、韓国球界を熱くしてくれている存在を今手放すには惜しい気もする。
 来週のコラムまでに記録は達成されているだろうか?達成後にはその様子をお伝えしたい。(記録は6月19日現在)
撮影:室井昌也


2003.6.13 4年目のチーム、2年目の新球場

 夏休みの計画はまだという方、お隣韓国で野球観戦を楽しむというのはいかがだろうか?夏に向けてこれからこのコラムでは少しずつ韓国の野球場も紹介していきたい。
 今回はSKワイバンズの本拠地インチョンにあるムナク野球場。昨年隣接するワールドカップ競技場と共にオープンした新球場。ソウルから西へ約40kmに位置する海に面した都市・インチョンは、2001年に開港した新空港でその地名を耳にした人もいるだろう。ムナク野球場は天然芝に最新鋭の設備を誇り、外野後方には木々に覆われた丘が拝め、緑が大変鮮やかだ。観戦施設も充実しており、2階部分には個室の観客席「SKY BOX」やソファーで飲食をしながら観戦できる「スポーツカフェ」、外野には乳幼児のための保育施設、バックスクリーンを挟んでライト側にスコアボード、レフト側に大型ビジョンと観客を満足させる設備を多数配置している。3階席部分は完全に屋根に覆われており、雨に濡れず快適だ。内野部分の照明はその屋根に取りつけられていて、夜間、場外から球場を眺めると、光の帯が美しい。
 この球場を本拠地とするSKワイバンズは2000年創団の新生チーム。現在、首位をキープし徐々に力をつけつつある。元カープのエディ・ディアスが好成績でチームに大きく貢献しているが、現在は左足首を負傷中で復帰が待たれる。好調のチームをバックアップする球団も積極的なファンサービスで楽しませてくれる。昨夏は、かつてインチョンを本拠地とした、サムミスーパースターズ風のユニフォームを着てのゲームや、チェテウォンの1000試合連続出場記念達成直後には入場料金1000ウォン(約100円)にするなど、ファンを大事にする球団努力が高く評価された。
 8月21日から24日まで、当誌の協力を受けて実施される「韓国プロ野球観戦ツアー」でもこの球場を訪れる。是非、この機会に生の韓国野球を感じていただきたい。
撮影:室井昌也


2003.6.6 あと5ヶ月。

 2004年アテネ五輪の出場をかけた予選となる「アジア野球選手権」まであと5ヶ月を切った。2つのイスを実質日本、韓国、台湾で争うことになるこの大会。その戦いに欠かせない選手が、今出場を危ぶまれている。
 イビョンギュ。打撃に冴えのないLGの中でひとり気を吐いていたが、先月29日のSK戦、ファーストゴロを打ちベースへ駆けこむ際に、左ひざ十字靭帯を負傷。復帰まで時間がかかりそうだ。
 イビョンギュとはどんな選手か?かつて日本でプレーしたイジョンボムは「韓国のイチロー」と表現されたが、タイプとして全く違うことが明らかだった。ではイビョンギュを「韓国の・・・」と例えるなら、しっくりくるのは「韓国の佐々木誠」だろう。例えるならというより、イビョンギュの第一印象が「佐々木誠に似ている」だった。左投左打、俊足で強肩の外野手、足を高く上げたバッティングフォームと、プロ入団以来6年間、毎年100本以上のヒットを放ち、通算3割を超える打率を残している
確実性の高さ、走攻守三拍子揃っている点がそう思わせた。そして顔もよく似ている。他にもそう感じている人はいるだろうと、昨年同じLGでコーチを務めていた清家政和氏に「イビョンギュって佐々木誠選手に、、」というと「そう、、」と即答だった。韓国代表チームには必ず名を連ね、しっかりと役割を果たしてきた。シドニー五輪では対日本戦で、同点で迎えた9回裏、好送球で赤星の足をホームで刺したことが記憶に残る。
 今季は開幕から4番に座っていたが、決して4番タイプではない。昨年はマルティネスが4番に入る機会が多かったが、彼も4番向きではない。大砲不在のLG苦肉の策だ。主力に故障者続出のチームにとって唯一の頼み、イビョンギュの離脱は痛いが、代表チームとしてもその復帰が待たれる。鋭い打球を放ち、グラウンドを駆ける姿が秋には観られるよう、回復を期待したい。
撮影:室井昌也


2003.5.30 極東をめぐる助っ人たち

 近年、日韓を往来する外国人選手が増えている。ベイスターズのタイロン・ウッズやマリーンズのホセ・フェルナンデスなども韓国球界での活躍を引っ提げ、日本へやってきた。逆に日本を経て、韓国でプレーする選手もいる。
 昨シーズン最も活躍したのは、防御率のタイトルを手にしサムソンの優勝に貢献した、元バファローズのナルシソ・エルビラだ。左腕から繰り出す多彩な変化球と抜群の安定感で、今季も活躍が期待されていた。しかし蓄積した疲労からか状態は良くなく、先日ファンに惜しまれながらメキシコへと帰国した。
 全外国人選手の中で一番好成績を残しているのは、今季からSKに所属、元カープのエディ・ディアス。大砲として期待するチーム事情に適合するか不安だったが、3割2分・10本・28点と首位SKのクリンナップを見事に務めていた。しかし、27日のLG戦、左足首に死球を受けまさかの戦線離脱。戦力としてはもちろん、チームに溶け込んでいたディアスを欠くSKはしばらく苦戦を強いられそうだ。
 ヒョンデにはマイカ・フランクリンがいる。1999年ファイターズに入団。サミー・ソーサに似た風貌と松坂投手デビュー戦で胸元にきた球に怒る姿、豪快なスイングなどが印象深い。初年度は30本のホームランを放ちながらも日本での生活は長くはなかった。昨年ヒョンデへはシーズン途中からの入団。同僚コーリー・ポール(元ライオンズ)は解雇となったが、フランクリンは長打力を買われ残った。今季は判定を不服として5試合出場停止になることで目立ってしまったが、一発か三振か、その派手なスイングは魅力だ。フランクリンのヘルメットの後ろには、手書きで娘さんの名前が書かれている。打席に入る前、じっとそれを見つめ気持ちを高めるフランクリン。
 故郷を離れ、それぞれの事情で極東の国々に活路を見出す選手たち。「助っ人」として多くのファンに愛される存在であって欲しい。
撮影:室井昌也


2003.5.23 魅力ってナニ?

 球場へ行くと、球団関係者や記者たちから「韓国の野球の魅力は?」とよく聞かれる。そのジャンルを知れば知るほど「魅力はコレ!」と一言で伝えるのは困難だ。しかし答えないのはヤボなので「違い」を探して答える。「韓国プロ野球の魅力」それは、、「チアリーダー」だと。
 スタンドには応援ステージが設置されており、チアリーダーは各イニングの合間や投手交代時に踊ったり、応援をリードする。その光景は、日本の都市対抗の応援風景に例えられるが、都市対抗やアメフトで見られるようなチアリーダーとは何かが違う。踊っている曲が韓国のヒットナンバーや、韓国人ならどの世代も知っているスタンXダードナンバーだからだろうか。
 チアリーディングというと一糸乱れぬ動きやアクロバティックなものを想像させるが、韓国のチアリーダーはダンサーという趣が濃い。そして一番の違いであり魅力は「人間味にあふれている」という点だ。踊りながら他のメンバーと無駄話や、踊り終わった瞬間ステージ上から、かったるそうな表情でハケたりと、その時の感情が手に取るように分かる。それを魅力というとひねくれているが、親近感は持てる。
 彼女たちはイベント事務所に所属し、事務所都合で翌年他チームのチアになったりと、選手同様プロフェッショナルだ。オフシーズンにはプロバスケットボールのチアリーダーとして活動。野球シーズン中は敵同士だったチアリーダーがオフは同じバスケチームのチア、ということもざらだ。
 各球団のホームページには彼女たちのプロフィールが掲載され、「野球ではなく好きなチアがよく見える席」を確保するために早くから球場へ足を運ぶ人も少なくない。ポータルサイトにチアそれぞれのコミュニティーもあり、身近なアイドル的存在だ。
 応援をきっかけに野球を好きになる人がいるように、チアリーダーが球場へ足を運ぶ「きっかけ」にはなりそうだ。
撮影:室井昌也


2003.5.16 ヘラクレスとライオンキングの争い

 ヒョンデの「ヘラクレス」ことシムジョンスが好調だ。昨年はホームラン46本でホームラン王のイスンヨプ(サムソン)とは1本差、打率、打点でもイスンヨプに次ぐ4位、2位と高いレベルで争った。(ちなみにホームラン3位は現マリーンズのホセ・フェルナンデス)
 今年初め、この二人がフロリダ・マーリンズのキャンプに参加。年も近い左右の両雄が今後どのような道を選ぶか、今シーズンは注目が集まっていた。
 しかし開幕直後、シムジョンスに悲劇が襲った。開幕2戦目、4月6日地元での対ロッテ戦、パクジチョルが投じた球が、左頬を直撃した。一昨年も左頬に死球を受け、1ヶ月欠場したこともありその時の記憶がよみがえった。
 検査の結果、骨には異常がなかったものの25針を縫う負傷。誰よりもウエイトトレーニングに力を入れ、食生活にも気を配り、作り上げた肉体を持ってしてもしばらく出場は難しいかと思われた。
 ところが翌8日のSK戦、元気にスタメン出場。かつて元ホークス秋山選手が被っていたような死球除けのヘルメット姿は痛々しいが、ここまで全ての試合に出場、どの打撃部門も上位に名を連ねている。今まで多くの名打者が、厳しい攻めによって崩されてきたが、シムジョンスはそれに屈しずに結果を残し続けている。
 一方のイスンヨプ、打率はあがらないものの、15日のダブルヘッダーで4本のホームランを放ち、1本差でシムジョンスを抜き返し、ホームラン王争い単独首位に躍り出た。
 それぞれが所属するヒョンデ、サムソンも首位争いを続け、これからも目が離せない。この戦いを観に、いつもさびしいヒョンデの本拠地・スウォンのスタンドが少しでも賑わうことに期待したい。
撮影:室井昌也


2003.5.9 オールスター戦

 韓国でも5月3日よりオールスター戦ファン投票の受付が開始された。7月6日までの65日間、各球場やインターネットで投票が可能だ。今年のオールスター戦は7月17日、ハンファの本拠地・テジョンで19年ぶりに開かれる。2リーグ制だった1999年、2000年を除き、東軍(トゥサン、SK、サムソン、ロッテ)と西軍(LG、ヒョンデ、ハンファ、キア)に分かれて戦う韓国のオールスター戦。対戦成績は東軍の16勝10敗だ。
 韓国でも試合前にはタレントのショーや始球式などがあるのだが、昨年は始球式でちょっとしたハプニングが起きた。男子中高生に絶大な人気を誇る女性タレント、チャンナラの投じた球を西軍の1番打者・イジョンボム(キア)が打ち返し、チャンナラのファンが激怒したというものだ。
 事の顛末は、始球式でチャンナラの投じた球がキャッチャーまで届かず、やり直しのためホームまでの距離を短くして2度目の始球式を行った。その球があまりにいいコースに来たためイジョンボムがつい打ってしまい、ライナー性の打球はマウンド手前から投げていたチャンナラの左肩をかすめて飛んでいったのだ。もう少しで顔面直撃という事態にチャンナラのファンは猛反発。KBO(韓国野球委員会)やキア球団のホームページではこのことに対する多くの反論が寄せられた。イジョンボムは故意ではなかったと説明。試合開始直前なので謝る暇もなかったとのこと。当のチャンナラもファンサービスと考えていると発言して、騒ぎは落ち着いていった。
 始球式にタレントが必要か?という是非もあるだろうが、異常な盛り上がりだったサッカーワールドカップが終わった直後だっただけに、こんな話題でも、幅広い世代が野球の話をしてくれたということに、ちょっぴり喜びを感じた昨年のオールスター戦だった。

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