ソウルから野球愛
文・室井昌也
Text by Muroi,Masaya

日韓を行き来し韓国野球を知り尽くした筆者が、知られざる韓国野球の世界をご案内!!

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2003.12.12 ライオンキングからマリンキングへ

 イスンヨプのマリーンズ入りが決定した。韓国を代表する「国民的打者」について、多くの人は日本のメディアが伝える情報でしか、その存在を知られていないが、イスンヨプとは一体どんな選手か?
 キョンブク高校時代は投手。95年サムソンに入団し1年目からレギュラーとして出場。当時の監督で、日本でも首位打者を獲得したペクインチョン(白仁天)氏の指導の元、3年目には32本のホームランを放ち初のホームラン王に。以後99年には54本、今年は最終戦でアジア新記録と言われるシーズン56号を決め、その映像は日本でも大きく扱われた。
 今回の報道を見ると、ビックマウスぶりが取り上げられているが、それはイスンヨプ本来の姿ではない。先日の訪日時、日本の記者と対する時にはとても緊張した表情だった。韓国国内での取材時にはいたって和やか、表情も明るい。新記録目前となった時も、連日過密日程の中決して嫌な顔をせず、毎試合試合前・試合後と、ゲームの結果に関わらずインタビューに応えていた。その姿は松井秀喜選手と通じる点だ。日韓の記者と選手間のスタンスの違いもあるが、スランプが続いた時、どうマスコミと対峙するかも、日本でのびのびとプレーするには重要だろう。
 パワーヒッターというより、ボールを呼び込んで柔軟に弾き返すタイプだが、日本野球に順応するにはしばらく時間がかかるだろう。元々スロースターターで5月6月と調子を上げていく。春先調子が上がらない時に、焦らなければ夏場には好結果が出るのではないだろうか。その点過度報道されないパ・リーグ、そして温かく見守ってくれるであろうファンの多いマリーンズに入団した事は、イスンヨプにとってプラスだ。
 2年後のメジャー行きにばかり目を向けず、まずは日本で頂点を目指す意気込みで取り組んでもらいたい。マリンの風に乗ったイスンヨプコールが聴こえる日が待ち遠しい。
撮影:室井昌也


2003.12.5 リニューアルする球場

 昨年オープンしたSKの本拠地インチョン・ムナク球場の優れた環境については以前にも記してきたが、それに刺激を受けてか各球場共、今まで以上に改装に力を入れてきた。
 今季、韓国プロ野球のメッカ・チャムシル球場が内野のネットを低くし、外野フェンスも後退させ選手との距離を近づけた。また来季に向け、キアの本拠地クァンジュもネットを下げ、外野フェンスを下げる。また座席の全面交換、そして土のグラウンドが人工芝へと変わる。今までの内野が土で外野が天然芝のグラウンドは、キア池内コーチ曰く「昔の広島市民球場のよう」と決して良い状態ではなかった。しかしその荒れたグラウンドとファンの熱さが、クァンジュの良さとも言えたので人工芝化はいささか残念だ。2000年に大改装をしたテジョンも座席の交換、フェンスの後退、地元企業向けの個室ボックス席も設置と更なる進化を見せている。
 球場の改装が入場者数増加に直結するとは限らないが、インチョンに多くの観客が集まり、市民全体でSKを応援した韓国シリーズを観ると、各球団・自治体も何か努力をしようという思いになるだろう。
 以前、球場で観客に対して独自に行った調査によると、球界に対しての要望に、球場の施設改善に対する声が多く聞かれた。決して観戦施設は悪くないのだが、観客の多くが「チームを応援」「野球を観戦」というより「野球見物」という娯楽のひとつとしての捉え方が多い為、「プレーより見物環境」との考えのようだ。
 今回の改装がリピーターを増やすきっかけになる事を期待したい。
撮影:室井昌也


2003.11.28 さらに近くなった韓国

 11月30日より、東京・羽田-ソウル・キムポ空港間を結ぶチャーター便の運行が始まる。日韓共に国際空港が成田、インチョンと都心から離れており、利便性を図る為、今年6月のノムヒョン大統領訪日を機に具体的に話しが進められ、1日に4往復の運行がいよいよスタートする。
 福岡では船を利用したプサン日帰りツアーが話題になるなど、年々韓国は気軽に行ける存在となっている。では韓国へ日帰り野球観戦をする事は可能だろうか?オフらしくちょっと考えてみた。
 飛行機の運航時間を考えると、ナイター観戦後の帰国は無理。6、7、8月は全日程ナイターとなるので(ダブルヘッダー除く)、春か秋の日曜日に予定を組む事となる。東京-ソウル間は約2時間。午前便の早いで出発すれば14時開始の試合には間に合う。ソウル近郊以外の球場でも、フランチャイズがある都市には国内線の空港がある為、なんとかゲームは観られるだろう。
 さて、帰りの足だ。韓国から日本に戻ってくる最も遅い便は、成田を例にすると、インチョン空港を18時45分に出発し21時に戻ってくる便。3時間のゲームを観た後ではちょっと厳しいか。新たに就航となった羽田-キムポ便は4便の時間帯に幅がなく、現時点では日帰りでの利用は難しい。
 いずれにしても日帰りでは航空料金も割高となり、あまり現実的ではないが、今後「不意のお休みに、ふらっと韓国へ野球観戦」ということが不可能では無くなってくるだろう。来季の日程はまだ発表されていないが、野球好きで旅好きの方は、日韓の球場をめぐる旅などを計画されてみてはいかがだろうか?
撮影:室井昌也


2003.11.21 FA権を取得した花火男

 日本と同様に、韓国球界もオフの話題の中心はフリーエージェントの権利を手にした選手たちだ。韓国のFAは、打者の場合2/3以上出場したシーズンが9シーズンに到達、投手は規定投球回数の2/3以上登板したシーズンが9シーズンに達した場合に得られる。尚、1998年以降に登録された選手は1軍登録の日数が150日以上に達すれば、上記と同様にみなされる。
 日々彼らをめぐる報道が繰り返される点も日本と同じ。それぞれが残留するのか、新たな地へ活躍の場を求めるのかと様々な情報が飛び交う。交渉期間が続くしばらくの間は静観するのがよさそうだ。
 FA資格対象選手24人のうち、13選手が権利を行使した。その顔ぶれは、イスンヨプ(サムソン)、チンピルチュン(キア)、ユジヒョン(LG)、チョンスグン(トゥサン)などいずれも韓国を代表するスター選手たち。そのひとりにマヘヨン(サムソン)がいる。一目見たら忘れないそのルックスから、熱心な韓国プロ野球ファンではなくても、記憶している人も多いようだ。
 プサン出身の33歳。コリョ大を経て95年地元ロッテに入団。入団からの9年間、常にシーズン通して活躍。通算打率.302、本塁打229本という数字を見てもその活躍のほどがうかがえるだろう。2001年にサムソンへ移籍、イスンヨプ、マヘヨン、ヤンジュンヒョクというクリンアップは豪華であり、個性的な面々だ。
 日本では個性的な打撃フォームの選手が年々減ってきているが、マヘヨンの背中を丸めて力で持っていこうするスタイルは、懐かしさを感じさせてくれる。ここ一番で劇的な活躍をするかと思えば、気のない様子であっさり凡退してしまうというそのギャップがファン心をくすぐっている。
 長期の複数年を要求しているマヘヨン。まだまだ活躍は観られそうだ。
撮影:室井昌也


2003.11.7 決戦間近

 不安的中というか、アテネ行きの切符を掴むにはかなり厳しくなった。期待された主力が次々と負傷という状況で集まったメンバーだが、現有戦力で戦うのはどこのチームも条件は同じ。しかし、ギラギラとした雰囲気を持った選手が少ない今回の顔ぶれは、いわゆる「韓国らしさ」とされるパワフルな野球を見せられる構成ではない。今日の日本戦、勝算はどこにあるだろうか?
 先発が予想されるキムジンウの重い速球がどこまで日本打線を封じ込めるかが重要だ。少々甘く入っても打球はそう遠くへ飛ばないくらいの気持ちで、広いストライクゾーンを活かし、自滅することなくゲームを作れるかがカギだ。後を繋ぐ投手陣だが、決して継投がうまいとは言えず、控える投手にも期待が持てないだけに、可能な限りキムジンウを引っ張っていきたい。左打者が続くところで、左腕のイスンホ投入という安易な采配は避けた方が良いだろう。イスンホは制球力に難があり、リリーフ向きではない。接戦になれば、台湾戦にも登板したイムチャンヨンへ繋ぐこととなるが、ストライクゾーンに違いにイライラすることなくコーナーへ投げられれば、初対戦の打者は戸惑うのではないだろうか。
 さて、打撃陣。イジョンボムが死球欠場し、さらに厳しい状況となったが、多くの観衆が入りプレッシャーがかかる戦いになればなる程、力を発揮するのも「韓国らしさ」。アテネ行きをほぼ手中に収めた日本と、崖っぷちの韓国では、モチベーションの違いはある。日本側の攻めとして、イスンヨプを警戒しすぎ、パクジェホンやチャンソンホに初球の入りが甘くなると、得点に繋がるだろう。後は捕手起用。台湾、中国戦とチンガプヨンがマスクを被り、中国戦の最後だけチョインソンが務めたが、チーム全体のまとまりや打線を考えると、チョインソン先発の方が期待が持てる。
 軍配がどちらにあがるにせよ、この戦いはアジア頂上対決にふさわしい、接戦を期待したい。
撮影:室井昌也


2003.10.31 アテネへ向けて

 いよいよアジア選手権が目前に迫った。オリンピック予選を兼ねたこの大会、アジア出場枠2つを、実質、韓国、日本、台湾(チャイニーズ・タイペイ)の3チームで争う。この大会を前に「韓国代表チームは手強い」との文字を各雑誌や一般紙の記事からも多く目にするが、実際はどうだろうか?
 まずは投手陣。経験のある左腕、ソンジンウ、イサンフン、クデソンが負傷の為出場を回避し、決して充実したメンバーとは言えない。軸となるチョンミンテ、イムチャンヨンは日本戦には登板してこないだろう。チョンミンテは、日本在籍時の印象を考えると登板の可能性は低い。イムチャンヨンは、下手投げに弱いとされる台湾戦の登板が濃厚だ。となるとキムジンウあたりが先発候補となるが、速球が武器の若い投手だけに、吉と出るか凶と出るか賭とも言える。
 打撃陣。韓国野球にイメージされる、破壊力のあるパワフルな打線という顔ぶれではない。打撃三部門全てで2位に位置したシムジョンスが、膝と肩の負傷でここにきて出場を辞退。マークが厳しくなるイスンヨプの前後を打つ選手が重要なだけに、キムドンジュ、パクジェホンがいかに出塁できるかがカギとなる。その出塁した走者をかえすのに期待されたのが、勝負強いホンセワンだったが、こちらもヒジの手術の為に出場不可。日本のメディアはしきりに「韓国脅威」をアピールしているが、今回のメンバーは日本同様最強チームとは言えない。両チーム共ベスト2に残る為には、「いかに台湾に負けないか」という戦いになるだろう。
 短期決戦に不可欠なラッキーボーイ的な存在には、この選手を挙げたい。捕手・チョインソン。元々、率は高くないがどの球種にも対応でき、勝負強さもある。それに今年はパワーも加わった。接戦が予想される戦いで、クリンアップで出した走者を確実に得点するには、下位打線も重要だ。
 5日に台湾戦、6日に準決勝リーグ1位と戦う韓国。7日の日本戦を前にどのような結果が出るだろうか。
撮影:室井昌也


2003.10.24 世代交代の波

 17日から行われている今年の韓国シリーズは、23日現在、3勝2敗でヒョンデがSKを相手に王手をかけている。シリーズの指揮を取る、ヒョンデ・キムジェバク、SK・チョボムヒョン両監督はいずれも40代の監督だ。
 今年発足から22年目を迎える韓国球界。やっとプロ経験者達がトップを占める時代がやってきた。
 今オフは、ドラゴンズでコーチ研修をしていたソンドンヨル氏が、どこの監督になるかに大きな注目が集まった。結果、サムソンの投手コーチに就任したが、その争奪戦の参戦したソウルの2球団、LGとトゥサンは、監督が退く形となり、イスンチョル、キムギョンムンコーチがそれぞれ内部昇格。シーズン途中でペクインチョン監督を更迭し、キムヨンチョルコーチが監督代行を務めていたロッテは、ヤンサンムンLG投手コーチが監督に就任し、故郷プサンに戻った。
 これで8球団中、62歳のサムソン・キムウンヨン監督を除く7球団の監督が40代となった。選手時代に感じた問題点を、まだその記憶が新しいうちに解決していくことが重要だろう。
 韓国でコーチを経験した日本球界出身者達は口を揃えて、「選手達が言われたまま指導を受け、疑問があっても質問せず首を傾げながらただ練習に取り組んでいる」と言う。上下関係がはっきりしている韓国社会において、目上の人に意見する事が難しいからだろう。首脳陣はじぶんの形で指導し、選手はそのやり方が自分に合っていなくても、それに沿って練習する。結果、レギュラークラスは一度その座を掴めば、自分のスタイルで技術の向上を目指すが、その他の選手は言われたままの練習を続け伸び悩み、レギュラーを脅かす存在になれずにいる。その為、主力選手があまり危機感を持たずにいるのが現状だ。
 若い監督の起用は、短期間で結果を求める為ではなく、長期的なチーム作りの為であると球団が考え、いかに辛抱できるかが全体のレベルアップに繋がるだろう。
撮影:室井昌也


2003.10.17 インチョン上陸作戦

 本 先週のコラムでSKがプレーオフ第1戦を先勝したと記したが、その後も連勝し、ポストシーズン5連勝で韓国シリーズに駒を進めた。よって17日からの韓国シリーズは、1位ヒョンデと4位SKの対決となった。
 この両チームには、本拠地をめぐる様々な縁が絡み合っている。創団4年目にして初の韓国シリーズ進出を果たしたSKはインチョンを本拠地とする。インチョンはソウルの西40kmに位置し、01年に開港した新空港がある都市だ。対するヒョンデの本拠地はスウォンだが、SK創団前はインチョンの住人だった。
 96年、テピョンヤンを買収したヒョンデは00年にSKが創団されるまでの間インチョンを本拠地とし、ソウル移転を条件とした暫定的な本拠地として現在のスウォンに身を置いている。スウォンはソウルの南にあるキョンギ道の都市だが、チームの縁故地はソウル。SKやサムソンが工場を持つ都市でもあり残念ながら地元に根付いているとは言えない。
 チョンミンテ(元巨人)やパクチンマンなど、インチョン出身の主力選手が多数所属するヒョンデに比べ、SKの地元選手の数はヒョンデの約半分。4年目のチームとしては仕方がないところだ。しかし、6月13日の本欄でご紹介した新球場の魅力と地元色を前面に出した積極的なマーケティングで、必死に「インチョンSK」をアピールしている。昨夏は最初にインチョンを本拠地とし、元カープの福士明夫(チャンミョンブ)も活躍したサムミスーパースターズ風のユニフォームでのゲームを行ったが、チーム自体はヒョンデの前身。ホークスが西鉄時代のユニフォームで戦うようなもので、ヒョンデにとってはあまり気分の良いものではなかったようだ。
 大都市チームが下位に低迷した為、1、2戦と3、4戦はそれぞれの地元で、5、6、7戦はソウル・チャムシルで開催される。この戦いを機にファンにアピールしたいヒョンデ、波に乗るSK、首都圏シリーズはどちらに軍配があがるか。
撮影:室井昌也


2003.10.10 プレーオフ展望

 2日に公式戦全日程を終了し、1日おいた4日よりポストシーズンに突入した。3位と4位で争われる3試合制の「準プレーオフ」は、創団4年目で初のポストシーズン進出を果たしたSKが、サムソンに1、2戦と連勝しプレーオフに駒を進めた。
 戦力的には断然有利だったサムソンは、今季最も日程の消化が悪く、連戦続きのままポストシーズンに。最終戦までイスンヨプのホームラン記録達成を目前にした異様なムードもあり、各選手とも疲労の色が隠せなかった。今季全133試合出場、リーグ最多安打を放ち一番打者としての役割を果たした3年目のパクハンイは連戦続きに「しんどいですよ。しんどくないと言ったらウソになる。でも先輩達が頑張っているのに自分が弱音を吐けない。」と気力でなんとか戦っているようだった。
 一方のSKは、集中力を欠きミスが続いたサムソンにつけ込み、見事プレーオフの切符を手に入れた。9日からスタートした2位キアとのプレーオフも、効果的に得点をあげたSKが4-1で第1戦をものにし、昨年のLG同様4位からの韓国シリーズ進出も夢ではない。2位キア、3位サムソンには勝ち越しているSK、選手個々の実力は上位チームに劣るが、わずかなチャンスを確実に得点に結びつけ、それを守り抜く戦いぶりが勝利につながっている。
 最後の最後まで順位が確定しなかった今季。圧倒的な強さを見せたチームはなく、最下位ロッテから貯金を多く稼ぎ出したチームが上位に残る結果となった。実力伯仲した同士の戦いは僅差の勝負が予想され、観る側としてはとても楽しみだ。ソウル、プサンのチームが6、7、8位と下位に集中しているのは残念だが、SKの躍進は新球場3年目を迎える来年、チームの魅力で観客を集めるきっかけとなりそうで、期待が持てる。
 キアかSK、5回戦制のプレーオフを制したどちらかが、17日からヒョンデとの韓国シリーズに挑む。
撮影:室井昌也


2003.10.3 成熟への道

 全国民が注目したイスンヨプのシーズンアジア最多となる本塁打記録は、2日、公式戦最終戦に見事、地元テグで達成した。自己タイとなる54号を放った頃から、サムソンのゲームはどの球場も観客が急増、各メディアも大きく取り上げシーズン後半の激しい順位争いを更に盛り上げた。しかし、この騒ぎには少し苦言を呈したい。
 この数試合、イスンヨプのホームランを目当てに、韓国では珍しく外野席からチケットが売り切れ、平日ナイターにも関わらずまるでセ・リーグの人気カードのように開門と同時に席が埋まった。それはいいことなのだが、そのほとんどはいい歳をした男達が、網を片手に早くから列を作り、「56号のホームランボール」という一攫千金の為に目の色を変えて集まったものだ。野球の楽しみ方は人それぞれで良いのだが、外野席に入れないと知ると内野では観ずそのまま帰ってしまう。全ては数千万円の価値があると言われる「ホームランボール」の為だ。それを狙う男達が手にする網の大きさはどんどんエスカレートし、最初は虫取り網程度だったものが、大きな麻袋に数メートルもある棒をつけて持参。そんなものを持っての観戦は妨害でしかない。
 このヒートアップした状況下、各投手達はイスンヨプに真っ向勝負をしてきた。先月30日、LG1点リードの9回表、2アウトからランナーが出塁し打席にイスンヨプを迎えた場面、次打者が代走から入ったコジヘンということを考えると、歩かすことを考えてもいいところだ。しかしフルカウントから勝負した結果が四球となるとスタンドからは多数のゴミ。その犯人の大半がオヤジ達なのだから呆れてものが言えない。このような行動が日々続いた。
 韓国球界は子供達への活動を熱心に行なっている。選手もファンへ紳士に接している。しかし、一部大人達の恥ずかしい姿を見て子供達はどのように感じているだろうか?次の世代にこの悪い習慣が引き継がれなければ、韓国球界は成熟していけるだろう。
撮影:室井昌也


2003.9.26 傷だらけの野生馬

 韓国球界でスーパースターといえば、野手ならイジョンボム、イスンヨプ。投手なら日本ではサムソン・リーとして知られた、イサンフン(LG)だ。チーム状態が悪い中、救援のタイトル争いをしていたが、先日1軍登録を抹消され今季はもうマウンドに上がることはない。理由は、右肩の習慣性脱臼と指先の血行障害。キャプテンとして残りわずかなシーズンを最後まで戦うかに見えたが、状態は相当悪いようだ。
 イサンフンの人気は絶大だ。ゲーム終盤、ブルペンに姿を見せただけでスタンドは沸く。野球に詳しくなくてもイサンフンのことは誰でも知っている。登板が告げられるとブルペンから長い後ろ髪をなびかせダッシュでマウンドへ。年中半袖シャツがトレードマーク(さすがに昨年11月のシリーズ時は寒そうだったが)、ストレート真っ向勝負のプレースタイルと、抑えた時の派手なアクションという分かりやすさがイサンフンを人気者にさせている。
 そのイサンフンの離脱はチームだけではなく球界全体を悩ませている。11月のアジア選手権、一番の敵となる日本は左の好打者がずらりと並ぶ。その為、力のある左腕投手で立ち向かいたいところだが、クデソン(ブルーウェーブ)、ソンジンウ(ハンファ)、そしてイサンフンと皆、負傷を抱えている。もうひとりの左腕、イスンホ(LG)は今季奪三振王確実で、代表メンバーにも選ばれていたが、二次エントリーでは経験不足と短期決戦向きのタイプでないことからメンバーから除外された。実績のあるサウスポー3人が、来季に備えるか、代表として戦うかの葛藤を続けている。
 「日本シリーズで好投する工藤(当時ライオンズ)の姿を見て完璧なフォームと思った」ことから背負った背番号47。本家のように丈夫な体を維持し、長く投げつづけることを多くのファンが望んでいるが、代表メンバーとして戦って欲しいとも願っている。今、苦渋の選択を迫られている。
撮影:室井昌也


2003.9.19 レギュラーを手にした男。

 阪神優勝に沸く日本。その阪神を引退後、今季韓国入りした選手がいる。サムソンのコジヘン内野手。高山智行と言ってもよっぽどのトラキチでなければ、その名をご記憶の方は少ないだろう。箕島高校から米独立リーグを経てプロ入りした変り種。しかも入団テストに合格するも手続きに不備があり、1年後の1999年ドラフト8位で阪神入りした。1軍経験はなし。その後、球団人事のあおりを受け2年で退団。トライアウトにも挑戦したが、日本球界では活躍の場を求められず、それから1年後の今季、テストを経てハンファへ。入団はしたものの韓国球界には合わないと感じたようだった。
 4月のある日、コジヘンを尋ねようとキアとの2軍南部リーグが行なわれているクァンジュへ足を運んだが、彼の姿はなかった。その日任意引退が公示され、彼の選手生活は終わったかに見えた。しかし、サムソンがコジヘンに手を伸ばし、2日後トレードが成立。そのトレードが彼に幸運をもたらすこととなる。
 移籍後は1軍に。夏場からは2番打者としてレギュラーに定着し、サムソン打線の一角を担っている。オープン戦では不安視された守備も、エラーは現在4つ。二塁手を無難にこなしている。75試合に出場し、規定打席には満たないが3割4厘で常に3割をキープ。のびのびバットを振らせてもらえることが好結果につながっているようだ。「食事はあんまり合わないですけどねぇ。まぁ食べたくなければ食べなきゃいいんで」と語るが表情は明るい。イスンヨプ、マヘヨン、ヤンジュンヒョクといった韓国を代表する好打者たちがチームメイトにいることを「いい手本が身近にいて幸せですわ」と良い環境でプレーできている。「このチームなら」とこれからのポストシーズンも心待ちにしている様子。
 「球場へ観に来る日本の人にはどんどん声掛けて欲しいですよ」と話すコジヘン。まだ25歳と若く、そして明るいコジヘンに日本のファンも声援を送ってあげて欲しい。
撮影:室井昌也


2003.9.12 それぞれのその後

 今年5月にスタートした当コラム。ここでとりあげた選手・コーチのその後について記してみる。
 ヒョンデ・シムジョンスは引き続きイスンヨプとホームランキングを争っている。現在6本差、試合数からしてもイスンヨプが有利だが、打率、打点共、タイトルを狙える位置につけている。残り試合、投打がかみ合えばヒョンデはそのまま首位をキープできるだろう。
 そのヒョンデを追うサムソンのイスンヨプ。次回コラム時にはシーズン54本の自己記録を塗り替えているのではないだろうか。記録、メジャー入りなど周りは騒がしいが、気にする様子もなく好調を維持している。
 激しい上位争い、ここにきて調子を上げてきているキアの池内コーチも元気だ。古巣阪神がV目前という状況に「こちらのタイガースも」と若手投手陣にハッパをかけている。
 一方、残念なのはヒョンデのマイカ・フランクリン。本コラムの直後に解雇となってしまった。また、ロッテ・石井丈裕コーチもペクインチョン監督の更迭にともない、8月中旬2軍へと配置転換となった。
 左ひざを負傷し戦線離脱していたLG・イビョンギュは球場に戻ってきた。といっても完治はまだだが、ドイツでの手術を終え、先月24日に帰国。日々、水中歩行やメンタルトレーニングなどを行ない、トレーニング後には4位入りを目指す仲間を激励に、そして感覚を取り戻そうと球場に足を運んでいる。チームを引っ張ってきたイビョンギュの言葉にナインは発奮。チームの雰囲気を盛り上げている。復帰は来季になるが、プレーオフ進出に向けてチームの一員として既に戦っている気分だろう。11月のアジア選手権に結成されるドリームチームにイビョンギュの名がないのは寂しいが、来春にはスタンドにイビョンギュコールが響き渡るだろう。
 現在、韓国はチュソク(旧盆)で連休中。デーゲームが続くこの期間にファンを沸かせるシーンがたくさん観られることを期待したい。
撮影:室井昌也


2003.9.5 ペナントレースの行方

 8月下旬に9月の日程が発表され、現在各チームともポストシーズンに向けて最後の熱戦を繰り広げている。1位のヒョンデは最も多くゲームを消化しており、これからの戦いが大変楽だ。今季14勝0敗、日本移籍前からの先発連勝記録を21に伸ばしたチョンミンテ(元ジャイアンツ)と、防御率1位、勝ち星でも13勝とチョンミンテを追うバワーズ(元ベイスターズ)の二人を中心に回せる為、投手のやりくりもしやすい。また、残りゲームの多くが下位チームとの対戦というのも有利だ。
 一方、ヒョンデを追うサムソンは、数多くのゲームを残し、連日連戦が続く。まずは5日からのヒョンデとの直接対決3連戦が天王山となる。あとは、自身の持つシーズン最多本塁打54本にあと5本と迫るイスンヨプが、記録を早くに塗り替え、プレッシャーから解き放たれると、チームにとって大きなプラスとなるだろう。
 ここにきて順位を上げてきたのが、キア。一時はBクラスに転落したものの、11連勝するなど快進撃を見せ、上位争いに名乗りをあげてきた。派手さはないが総合力では上位2チームに劣らないキアは、分が良いサムソンとのゲームを終盤に5つも残している。今月下旬までに両者の差はどうなっているか。
 4位までが準プレーオフに進出できる韓国プロ野球。創団以来初のポストシーズン入りを目指すSKだが、ここにきて失速してきた。しかしSKを追うLGも決定力不足。両者ともなんとかして4位の座にしがみつきたいところだろう。
 2001年はシーズン4位のトゥサンが韓国シリーズで優勝(その時のシリーズMVPはウッズ(現ベイスターズ))、昨年も4位のLGが最後の最後まで優勝チーム・サムソンを苦しめるなど、今後の戦い如何によってはどのチームが優勝するか、全く予想がつかない。来季からのパ・リーグプレーオフ制導入の参考としても、これからの戦いに注目していただきたい。(記録は9月4日現在)
撮影:室井昌也

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