The Wind from Lakeland/タイガースタウン奮闘日記【Vol.1】
文、写真・武藤雄太
Text,Photographs by Muto,Yuta

デトロイト・タイガース1Aのレイクランド・タイガース。(フロリダ・ステート・リーグ)
何かの縁で当地にてインターン研修を行う武藤雄太がマイナーリーグの内側をリポート。
スプリングトレーニングからレギュラーシーズンまで、マイナー球団職員の奮闘記をお伝えします。

武藤雄太/1982年東京都出身。
高校3年時に交換留学でノースダコタ州へ。
2部リーグながら地元高校の野球部で主にトップバッターとしてチームに貢献。
高校卒業後、FIFA World Cupのメディアボランティア経験後、スポーツマネージメントを学ぶために再渡米。
2003年イングランド一部リーグ(当時)クリスタルパレスFC、
2004年Jリーグ2部(J2)湘南ベルマーレでインターン。
現在はエンディコット・カレッジ(マサチューセッツ州)でスポーツマネージメントを専攻。
レイクランド・タイガースにてインターン研修中

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6月6日「第44回フロリダ・ステート・リーグ(以下FSL)・オールスターゲーム」

 第44回フロリダ・ステート・リーグ(以下FSL)・オールスターゲームに出場する選手が発表された。
 FSLはイースト・ディビジョン6チーム、ウェスト・ディビジョン6チームで構成されており、対戦カードはもちろんオールイーストvsオールウェスト。各チームから23選手ずつ選出される。
 我がレイクランド・タイガースからは、なんと大量9人が選出された。その9選手の中でスコット・トゥーサ遊撃手とクリス・ホーマー投手のオールスター出場には特別な感情がある。

 トゥーサは堅実な守備としぶとい打撃が売りのプレーヤーで、現在中日ドラゴンズでいぶし銀のような活躍を魅せる川相昌弘のようなショートストップである。
 オールスター選手発表の約2週間前に上司から「出場するかもしれない選手のヘッドショット(打席に立つ際にビジョンに出す顔写真入りの画像)と簡単なプロフィールをオールスター開催チームに送れ」と言われていた。
 トゥーサのデータを作る時、どうしてもネタがなかった。タイガースにもドラフト外で入団してきたし、下のクラスで首位打者や派手な成績を残したわけでもない。まして今年はダブルAから降格してきた形だ。
 プロフィール提出時、成績は打率3割を若干下回りホームランは1本、打点も15。盗塁に関しても40試合で6となんとも微妙な数字。トゥーサには申し訳ないが、たぶん選ばれないだろうと私自身で判断してしまい、結局送らなかった。
 そして2週間が経ち、オールスター開催チーム、クリアーウォーター・トラッシャーズから私宛にメールが届いた。
 「おめでとう9人の選手があなたのチームからオールスターに選ばれました。しかし、スコット・トゥーサのバイオがありません。至急送ってもらえますか?」。
 プレスリリースではなく、このメールで吉報を知ったので少々驚きだった。
 実際トゥーサはその後打ちまくり、打率も3割3分あたりを保ち、首位打者争いに絡もうとしている。オールウェスト・チームでもしぶとい打撃と堅実な守備を見せて欲しい。

 クリス・ホーマーはクローザーである。現在13セーブとFSLでトップの記録を残している。
 しかしそのホーマーの調子が近頃悪い。登板するたびに四球を連発し、ランナーを貯まったところで安打を浴び試合をひっくり返されている。監督も2イニング投げさせるとか、色々試してみたがうまくいかなかった。私が試合を見守るプレスボックスからでも、マウンド上での彼の不安な様子が鮮明にわかる。
 そんな最悪の状態の中オールスター出場の知らせが届いた。
 どん底の状態でのこのニュース。私自身非常にうれしかった。またこの知らせが良い薬になり調子を取り戻して欲しい。


5月28日「Superstitious(ゲン担ぎ)」

 スポーツ界にはゲンを担ぐ人が多いという話をよく耳にするが、レイクランド・タイガースの監督マイク・ローハースもとことん信じてしまう性格だ。
 以前選手がアップ中に、フリー打撃をさせてもらった。ボールを投げてくれたのは監督のローハース氏。(なんとも贅沢だ)
 その日の試合、チームは負けてしまい、以後、BP(打撃練習)をさせてもらっていない。

 試合前にビジョンに流すスライドで、前日のゲームの一言感想を監督に頼んだ。はじめは快く引き受けてくれた。しかし、コメントをもらえたのはその日が最初で最後になりそうだ。
 企画初日、チームは大敗してしまった。
 翌日はもちろん大量失点で負けたのでキャンセル。
 その次の試合「これをやって11点もとられたのだから、しばらくなし」と、言うことになってしまった。
 事実、チームはこの日を境に1週間のロードに出て負け越して帰ってきてしまった。

 久々のホームゲーム、私としてはなんとかプレゲームを面白いものにしたかったので、懲りずに監督室へ向かった。幸い、この遠征の最終戦は勝ったので今日こそは何かもらえるのではないかと思った。
 ローハース監督が僕の顔を見ると「F●●K comment!」私に向かって噛み付いてきた。
 彼はすかさず笑みを浮かべながら「Superstitious(ゲン担ぎだ)」と言うことも忘れなかった。
 私はそこまで言われても、まだ何か出てくるだろうと思って、毎日彼に会いに行った。するとどうだろう。彼に「F●●K comment!」と言われた日は毎日勝っていることが判明した。彼自身もそれに気がついた。

 しかしこのゲン担ぎ、落とし穴が存在する。
 一度、監督室以外のところで例の一言をもらった。するとその試合は負けてしまった。
 あの部屋は重大な力を持っているに違いない。
 また、勝ちパターンはいつも先制されてからの逆転勝ち、もしくはクローザーが打たれてからのサヨナラ勝ちと心臓に悪い。
 お客さんとしてはスリリングな試合が楽しめ、営業的には大喜びのルールかなとも思う。

 何はともあれ、どんな形であっても勝ちはいいものだ。自分が「F●●K!」と言われるだけで勝てるならお安い御用だ。
 従って、勝利のために私は明日もクラブハウスへ足を運ぶのであった。


5月23日「今、大事なことは…」

 先日、あるエージェント関係者から、口頭で某日本人大リーガーの専属通訳のお話をいただいた。レイクランド・タイガースが私をインターンとして迎え入れてくださる時の約束が、「8月いっぱいまで働く」ということだったので、今回の話は丁重にお断りした。

 以前から通訳という仕事には非常に興味があった。
 特にピッチャーの通訳になれば、ピンチの時にマウンドに上がれるし、憧れていたプロ野球の現場に少しの間でも入ることが出来るからだ。
 しかしアメリカ野球界において言葉を訳すという仕事は、文字通りのそれ以外何もしないことも事実である。
 この件を持ってきてくださった方にも以前、「通訳というのはメディアの光を浴び派手な仕事だが、実務経験としては弱い仕事」という話を伺った。
 デトロイト・タイガース強化部の方からも「通訳から選手の獲得、放出を決定する部門に入り込む可能性もあるにはあるが、大多数は代理人の方に流れていく可能性の方が高い」とアドバイスをもらったこともある。あいにく私にはエージェント業に興味はない。

 私が今レイクランドでしていることは、試合前の1時間をファンの方々に楽しんでもらえるようにすること。スタジアムを訪れる方々に少しでも才能あふれる選手たちを知ってもらうことだ。
 約2時間半の試合時間中、約15分しか選手全体が動かないと言われる「止」のスポーツである野球を、エキサイティングなエンターテイメントに仕立てあげること、とも言い換えられる。
 私のインターン期間がもし5月半ばで終わっていたら、今回の件は快諾したかもしれない。しかし、例えシングルAでも今の仕事はとても魅力的だ。通訳の話も気にはなったが、何より今、おこなっている「スタジアムの雰囲気作り」の話はなかなか来ないだろう。


5月16日「マイナーリーグの宿命」

 先日、自動車レースで有名なデイトナビーチまでレイクランド・タイガースのアウェイゲームを観にいった。
 デイトナにはシカゴ・カブス傘下のデイトナ・カブスがある。
 デイトナ・カブスはフロリダステートリーグで1〜2位を争う人気チームである。デイトナビーチが観光地であることも手伝って、彼らの観客動員数は常に4桁である。

 試合の方はタイガースのドラフト1位(全体で2番目)のジャスティン・ヴォーランダーが力投し、8回を3安打1失点に抑えるものの、相手の投手陣もよくがんばり、9回表に入り0-1。
 しかし、そこから劇的な逆転スリーランホームランでタイガースが勝利を収めた。
 僕はホーム以外のグラウンドには入れないのでダグアウト越しに選手とハイタッチ。チームの一員として喜びを分かち合えた。
 人気チームの秘密を探りに来たはずが、ゲームを楽しんでしまった。

 今年のレイクランド・タイガースは非常に強い。
 1人1人が、地味な役割であっても、その仕事を忠実にこなし、見ていて本当に気持ちのいいチームだ。
 例えば出番の少ない控えキャッチャーもブルペンでの投球練習や子供の始球式の相手などの退屈な仕事でも誇りをもってこなしているように見える。
 だからこそ思う。メンバー全員をメジャーの舞台でプレイさせてあげたい。この面子で何年も野球をさせてあげたい。
 残念ながらそれは夢物語で、来月にもこの日先発したヴォーランダーは上に行く話がある。多くのプレーヤーは来シーズンにダブルAに上がると予想されるが、マイナーリーグのコーチになるためにトリプルAから降格してきたものもいる。単純にカットされる選手も出てくるだろう。
 映画の「メジャーリーグ」ではないが、このチームでいられるのも今年のみ。何があろうとこのメンバーでシャンパンシャワーがしたい。


5月9日「タープ天国」

 試合中、突然の雷雨で試合が中断する。
 選手がダグアウトに引き上げるのと同時にグラウンド・クルーが一目散にフィールドに飛び出し、素早くタープ(雨よけシート)を内野に広げる。
 こんな光景をメジャーリーグ中継で見たことがある方も多いと思う。

 レイクランド・タイガースは通常グラウンド・クルーが3人しかいないため、彼らだけではタープを広げることが出来ない。従ってチームスタッフ総出でタープ作業に入る。それが実に滑稽だ。
 試合中雨が降り出し始めると同時に、音楽を担当しているものはアナウンスのボリュームを調整しつつ服を脱ぐ。
 ストライク、ボールのカウント係は投球間を利用し巧みに着替える。
 観客は試合を見ているより、その慌て具合を見ていたほうが楽しいかもしれない。
 もっともフロリダの気候上、雨が降り始めたかと思うとすぐに止んでしまうこともよくある。そんなときはいたずら通報聞いて駆けつけた消防士のような気分だ。

 タープを直接広げる僕らも一苦労だが、ジェネラルマネージャーはもっと大変だ。彼自身タープを広げるだけでなく、試合中止、決行の判断も下さなければならない。
 なにせフロリダの気候は予想しにくい。通常タンパベイ方面(西)から雲がやってくる。天気レーダーを見ると、タンパベイの方では小雨だったのに内陸に入ったら雨足が強くなることもあるし、その逆も多々ある。
 試合開始1時間前くらいにタープを敷いてしまうと、例えプレイボール数分前に雨が止んだとしても、タープを撤収後のグラウンド整備、そして選手のウォーミングアップが待っているわけで、定刻から1時間以上延びてしまう。
 レイクランド近郊の町から遠征に来ているチームは試合終了後1〜2時間かけて帰るので、その辺りの時間配分も考えて試合を行うか、中止にするか決めなくてはならない。
 雨が一度降り始めると憂鬱な顔にもなってしまう。

 不幸中の幸いは、この先デーゲームが無くなっていくことだ。
 1時開始の試合で、朝6時にスコールが来たら、僕らはおそらく電話で叩き起こされ、眠い目をこすりながらスタジアムへ走ることになるだろう。それだけは勘弁願いたい。
 スタッフの中でタープが好きな人間は誰もいない。
 タープ作業をなくすために僕は日々テルテル坊主を寝る前に吊るしている。


5月3日「FC東京対ボカ・ジュニアーズ戦中止について思うこと」

 サッカーの話で恐縮だが、先日FC東京VSボカ・ジュニアーズのプレシーズンマッチが中止となった。本決まりの前にFC東京側から「やりますよ」と、発表してしまったからファンとしては残念な結果になってしまった。
 
 実はレイクランド・タイガースでも似たようなことがあった。
 フロリダ・ステート・リーグ開幕直前に、地元の大学と親善試合をしようという話があった。レイクランド・タイガースのディレクターが、口約束で「フレンドリーマッチをします」と大学野球部の監督に言ってしまった。対戦予定だった野球部ホームページのスケジュールの欄には、タイガースとの対戦が予定アップしまっていた。

 結局、この試合は実現しなかった。原因はお金である。
 タイガースとしては、外野フェンスの広告、行われるはずだった試合のチケット、プログラム広告等、セットを6,000ドルで買ってもらいたかった。
 しかし大学側から「高すぎて払えないと」言う回答をもらった。

 チーム側としては6,000ドルが最低ラインだった。
 将来を担う選手たちをわけのわからない試合で怪我をさせたくない。
 こちらが相手の選手に怪我を負わせたらどういう責任をとるのか?
 万が一負けたら評判はガタ落ちだ。
 6,000ドル以下の条件でこれらのリスクをとることはできない。
 以上がチーム側の見解だった。

 僕が6,000ドルのパッケージ・デザインをしたし、大学まで何度も足を運んだので、どうしても試合を組みたかった。
 6,000ドルという金額はディレクターが決めた金額で、僕個人としては、試合チケット500人分(約2,000ドル)だけでも十分だったが、この意見はまかり通らなかった。

 FC東京VSボカ・ジュニアーズの場合、プロモーターが間に入るだろうし、TV放映権やグッズ売り上げ分配なども絡んでくるので、タイガースのようにシンプルな金額問題ではなかったはずだろう。しかし最終条件の確認で、主催者側が提示した額がボカの妥協できる範囲以上だったことが想像できる。

 今回のマッチメークは東京VSボカと比べたら、ものすごく規模が小さいとはいえ、広告代理店のような仕事できたので非常に有意義な経験だった。
 欲を言えば、開催したかった。開催できていれば、僕自身、ステップアップする大きな武器になったと思う。


4月25日「地域密着とはなんだろう?」

 地元の小学校に日本人団体が研究視察でやってくることになった。ひょんなことからボランティア通訳兼ガイドを頼まれた。平日にその団体がやってくるので仕事を抜け出さなければならない。ボランティアをする代わりに、そこの子供たちにレイクランド・タイガースをアピールする日をもらえればうまくバランスが取れると思った。
 しかし、タイガース側はお金が入ってこない限り、つまりグループチケットを買ってもらわない限り、仕事を抜け出してこのボランティアをすることを許してくれなかった。理由はもちろん「営業日だから」だ。

 「こういう小さなチームこそ、地域の人たちとのふれあいが大事だ」と。しかし、実際中に入ってみるとそれ以上にお金に執着している。お金が関わらないところではまず動かない。もしかすると他のチームはそうでなく、レイクランド・タイガースだけかもしれないが…。

 某国サッカーリーグの方に知恵を借りて、なんとかグループチケットを買ってもらえるように案を出したが結局、ダメだった。
 週末に視察日程があったため1日だけ手助けすることが可能だった。しかし、その学校へ行き、今度は校長をはじめ、関係スタッフの対応の悪さ(金は無いが、とにかくボランティアで仕事をしてくれという態度)にウンザリし今回の件は流れた。

 「お金に執着するクラブ」と「相手のことを考えないで無料奉仕を頼む学校」の板ばさみになった。
 この2者間で「地域密着型クラブとは何か?」ということを良く考えさせてもらった。
 仮にレイクランド・タイガースが、僕が昨年お世話になった湘南ベルマーレのようなクラブだったら、今回の件はうまくいっていたかもしれない。しかしJリーグのモデルは「ドイツ型」であってアメリカのスポーツビジネスではない。Jリーグの理念に慣れてしまった僕は、お金にうるさいアメリカン・スポーツに適応する必要があるのかもしれない。それでもJリーグの掲げる地域密着の方が美しいなあといつも思ってしまう。


4月16日「シェフィールド事件で思うこと」

 4月14日に行われたボストン・レッドソックスVSニューヨーク・ヤンキースの伝統の一戦。
 ゲーリー・シェフィールドとボストンファンのつかみ合い事件は、松井秀喜が出場していた試合ということもあり、日本でも大きなニュースになったと思う。

 「ファンの手が唇に当たったと思った。(レッドソックスのジャイソン・ヴァリテックが打ったライト戦フェンス際のゴロ打球を処理しようとした時、スタンド最前列のファンがシェフィールドを叩き、捕球を邪魔しようとした)」と、いうのが彼の言い分だった。
 数回リプレイを見た。これはあくまで私見だが、そのファンはシェフィールドを叩こうとしたのではなく、単にボールを捕ろうとしたのではないかと見えたのだが…。

 ファンがインプレイのボールを触った時点で、自動的にツーベース・ヒットになってしまう。
 ヴァリテックの打球はグラウンダーで、ライトが広いフェンウェイパークなら十分三塁打になるチャンスはあった。
 あなたがボストン・ファンで、なおかつ勝負が決まっていない状態だったら、このボールを捕ろうとするだろうか?

 アメリカはスポーツビジネスが非常に大きな国である。
 どんな競技であれ、至るところに観客を楽しませる仕掛けがてんこ盛りになっている。
 極端な話、主催者側はスポーツ・コンペティションを楽しんでもらうよりも、イベントを楽しんでもらえれば良いと思っている。

 僕はイベント主軸の状態がこのような事件を起こしているのだと思う。
 ファンは勝負の結果にこだわる前に楽しめれば良い。(ボストンが勝とうが負けようが、ボールをゲットできれば良い)
 2003年のナショナルリーグ・ディビジョンシリーズでカブスのモイセス・アルーが捕ろうとしたファールフライをスタンドのファンが奪い取ってしまったケースも同じことだと思う。(直後、カブスは失点し、約一世紀ぶりのワールドシリーズ進出を逃す)

 では、「勝敗<イベント」状態が「悪」か? そうとも言い切れない。
 何の「味付け」もない試合は相当な野球愛好者でない限り退屈に違いない。
 しかし、今のアメリカン・スポーツはこの「味付け」に毒されていることも事実である。
 スタンドでビールを飲み、「わー」と騒げればどっちのチームが勝とうと関係ない。全員とは言わないが、多くのアメリカ人はこういう連中が多く、NPBファンや、Jリーグサポーターに比べて薄っぺらだと感じることもある。

 今、レイクランド・タイガースのスタジアム・イメージを預かっている物として、このような騒げれば良い的なファンを増やしたくない。
 しかし、ディビジョンが低ければ低いほど、イベントの占める割合が高くなってくるのも事実である。
 従って、今僕が出来ることは、イベント演出主体のゲームを運営する中で、どうしたらゲームそのものを楽しんでもらえるか、どうしたら勝ち負けで一喜一憂してもらえるか、そうするためにはどうしたら良いか? 
 こんなことを考えている。
夕焼けが美しいボールパーク。演出だけに頼ることなく、チームを純粋に愛してくれるファンを1人でも増やしたい。


4月3日「ステロイド」

 ボストン・レッドソックスとニューヨーク・ヤンキースの開幕戦から今年もメジャーリーグが開幕した。
 華々しい開幕戦の裏側でタンパベイ・デビルレイズのアレックス・サンチェスが10日間出場停止となった。違法薬物(ステロイド)使用のためだ。

 私は選手ではないのでステロイドとはまったく縁がないが、マイナーリーグ選手寮に住んでいる私の回りで先日こんなことがあった。
 早朝、選手寮の廊下が騒がしい。英語、スペイン語が大声で響くのでつい目を覚ましてしまった。何事か、とドアをあけると選手たちが眠そうな顔をして寮の外に出て行った。よく声の内容を聞いてみると「Drag Test! Drag Test!」と叫んでいる。部屋という部屋のドアを叩きまくり、選手全員を起こしていた。
 どうやら抜き打ち検査だったらしい。メジャーの薬物テストに立ち会ったことはないが、これと似たように突然やっていたことだろう。

 今シーズンは何かとステロイドの話題が多い。
 ホセ・カンセコの本に某キャッチャーも使用者の一人だと書いてあったが、彼はマスコミの前できっぱりと否定した。
 しかしこんな証言もある。彼のキャンプ地で長年勤めているスタッフがキャンプ初日、彼を目にしたときの印象を私に語ってくれた。
 「去年より体が一回り小さくなっている」スタッフだけで¥なく、他の関係者も彼の体格について違和感を抱いたものが多い。
 毎年、オープン戦の初戦は彼のチームと地元の大学と親善試合を行う。地元大学の選手も彼が痩せていたことをしきりに話していた。

 今シーズン、選手も違法薬物に対してナーバスになっている。リーグ側も検査や処罰に本腰を入れている。非常にデリケートなこの問題。私の周りでも当たり前のように起こっている。


4月3日「中締め」

 4月1日、ニューヨーク・ヤンキース戦。
 9回表、ヤンキース最後のバッターがアウトになり試合終了。同時にレイクランドでのスプリング・トレーニング全日程が終わった。あっという間の1ヵ月半だった。

 スプリング・トレーニング終了後、僕はフロリダに来てから初めての2連休をもらった。
 食事に出かけてタイガータウンに帰ってくると今まであった駐車料金が表示されている看板がなくなっている。オフィスの前を通ると、デトロイトのスタッフが荷造りを終え、スーツケースがロビーに並んでいる。
 朝起きて、広報から遠征選手リストをもらい。「OO来ないのかよ!」とか、「日本でもプレイしたXXがいる!」などと一喜一憂することも、もうないのかと思うと非常に寂しい。

 クレイグ・モンロー外野手が頭角を現してきたこと、強力ブルペンの完成など、デトロイト・タイガースにとってもレイクランドでの1ヵ月半は非常に実りのあるものだと傍から見て思うと同時に、自分自身にとっても非常に充実した日々だった。
 オープン戦とはいえ、全試合を通して大きなミスなくスタジアム・ビジョンを運営できたことを誇りに思う。また、日米のメディア、野球関係者の方々とお話が出来、少しでもネットワークが作れたことも大きな財産である。

 レイクランドでのメジャーシーズンは終了したが、1週間後にはシングルAシーズンが始まる。スプリング・トレーニング終了を期に中締めとして気持ちを改め、4月9日のホーム開幕戦に向け今まで以上に全力投球をしようと思う。これからもよろしくお願いします。
オープン戦期間の大きな仕事だったビジョン操作。写真はパッチ・ロドリゲスの打席でのもの。


3月28日「味付け」

 木曜日にデビルレイズvsレッズのオープン戦を観戦してきました。お目当てはこの日先発の野茂英雄。
 野茂は6回を投げて1失点。ストライクも多く、スピードも以前レイクランドで登板したときと雲泥の差でした。

 野茂投のピッチングも素晴らしかったのですが、それと同じくらい印象的だったのがデビルレイズの試合演出でした。
 主力選手がほぼ全員フィールドを後にする8回、デビルレイズは単打を2本続けてノーアウト1、2塁の場面を作りました。
 この日は地元の日本人大学生と観戦していましたが、彼らは2本目のシングルヒットの後こう言いました。「試合が盛り上がってきましたね」。他のアメリカ人のファンもこの小さなチャンスにノリノリです。
 正直な話、2本目のヒットが出た後1塁走者が激走し1,3塁になっていたらたしかに白熱してきたと言えるかもしれません。しかし単にシングルが2本続いただけで、タイムリーヒットでもありません。しかも次のバッターはメジャーかマイナーかギリギリの選手。僕としてみれば立ち上がって歓声をあげる理由はありません。しかしスタジアムは実際にヒートアップしていたのです。なぜか? 音楽の使い方が抜群に良かったのです。

 どんなヒットでも必ず歓声が上がります。その声が小さくなり始めるころを見計らって、デビルレイズの音楽担当者はアップテンポの曲を流します。そのタイミけっきょくングが実に素晴らしかった。観客は声を出す変わりに立ち上がってリズムに合わせて手拍子を始めます。
 結局、デビルレイズは外野フライからのタッチアップで1 点しかとることは出来なかったのですが、まるで3点くらい得点したのではないかと思わせる濃厚なイニングでした。
 いつも行われているこの演出効果が良いのでしょうか。デビルレイズvsレッズという地味なカードにもかかわらず、スタジアムの約8割ほどが埋まる5,132人の観客を集めました。

 デビルレイズの試合運営から大きなことを学びました。しかしレイクランドとセントピーターズバーグ(デビルレイズのキャンプ地)の年齢層は単純に見ただけで20歳近くは違います。
 個人的にはデビルレイズのような方向で試合を味付けしたいのですが、それをしたら失敗するでしょう。僕が音楽を担当する試合は「デビルレイズのようなやり方もあるよ」と、言うことを頭に入れてレイクランド・テイストを作りたいと思います。本当に勉強になった一日でした。日々、これ勉強です。


3月21日「日本のテレビはアイディアの宝庫」

 Spring Trainingも後半戦に入ってきました。
 ほぼ休みなく毎日仕事で疲れはありますが、テレビやファンとしては見られない世界のおかげで、“つらい”という感覚はまったくありません。 
 このままずっとメジャーのチームについていられれば、そんな思いでいっぱいです。

 デトロイト・タイガースがミシガン州に戻ると同時に、今度はレイクランド・タイガースの2005年シーズンが始まります。
 一流選手が集まる試合は黙っていてもファンが球場へ足を運びますが、シングルAとなるとそう簡単にはいきません。そこでさまざまなプロモーションを付け加えます。

 アイデアを考えつつ、日本から持ってきた正月番組の録画ビデオを見ていました。そこで思いました。日本のバラエティー番組はアイデアの宝庫です。
 お笑い番組を見ていたのですが、攻守交替の間に1分ぐらいのコントをベンチの上でやらせたら面白いと思いませんか? 
 もうひとつ考えたのは、昔日本テレビ系列で「マジカル頭脳パワー」と言う番組がありました。その中で「エラーを探せ!」(2枚のアニメが隣合わせになり同時に流れ、回答者がエラーを当てるクイズ。パネラーは数回その動画を見ることができ、最後の方になるとスピードが遅くなり難易度の高いエラーを発見しやすい。もちろん難しいものは高得点である)
 この「エラーを探せ!」を例えば5回から毎チェンジ間にスタジアムビジョンで流し、ファンにマイクを向け答えてもらう。最も難易度の高い問題を当てたファンにはユニフォームプレゼント。
 これらの企画は我ながら斬新なアイデアだと思っています。

 もちろんこれらの企画を実際に行うためには様々な障害があります。しかしそれらをクリアー、実行できれば観客数も上がっていくと僕は信じています。
 1つ1つできることから頑張っていきたいと思います。これらの企画がどうなったのかは、追ってこのページでご報告いたします。


3月14日「最近新発見の連続である」

 スプリングトレーニングの間、一人の選手が打席に入れるのは60回までらしい。恥ずかしながら今まで知らなかった。先日、デビルレイズ野茂英雄の取材にこられた某ラジオ局の方が教えてくれた。ありがとうございます。

 ビジターチームはレギュラーメンバーの半分も連れてこない。
 せっかくヤンキース戦、メッツ戦なのに両松井選手がレイクランドにやってこない。
 彼らのプレーが見られないのも残念だが、彼らの取材にやってくる日本人メディアに自分を売り込むチャンスがなくなるのも歯がゆくて仕方がない。 
 関連して、スプレッドスクアッド(ベンチ入り選手を2チームに別け1チームをホーム、もう1チームを遠征に出すスケジュールのこと、以下SS)のチケットセールスはフルメンバーの試合と比べて売れ行きが良くない。しかし考えてみるとSSであろうとなかろうとスタメンの半分しか対戦相手は連れてこない。実際あまり変わりはないのではないかと思い始めた…。

 メジャーリーグに打撃投手はいない。いつもバッティングコーチが投げている。
 某パ・リーグ球団のスカウトの方がポツリと言っていた。
 「大リーガーもマシンや年配のコーチが投げる球でなく生きたボールが打ちたいだろうな」。
 これはビジネスチャンスかもしれない。

 働いていると試合の展開がものすごく速く感じる。
 スタジアムビジョン係としては試合の流れについていくので精一杯。イニング間には広告を出すのでトイレに行く暇もない。
 従ってファールで粘ってくれるバッターやフォアボールを連続してくれるピッチャーは心にゆとりを与えてくれる。
 読売ジャイアンツ・堀内監督や東北楽天ゴールデンイーグルス・三木谷オーナーがスピード野球を唱えているが、スタッフにとってそれはそれで非常に大変なことである。
僕が毎日、働くのがここジョーカー・マーチャント・スタジアム。スコアボードも新しくなり素晴らしい球場なのだが、客足が…。


3月6日「ゲーム開催時の流れ」

 ついにオープン戦が始まりました。先週はレイクランドでヤンキース戦もあり、残念ながら松井秀喜は遠征メンバーから外れましたが、デレック・ジーターやアレックス・ロドリゲスなど豪華メンバーがやってきました。

 スコアボード担当の僕は13時からの試合だと、8時半にはスタジアム入りし、まず試合前の全体ミーティングで確認事項を話し合います。開門の11時までは基本的に自由ですが、ビジター選手が打席に立ったときに表示する名前の打ち込みや、前の試合で修正が必要な画像を手直し、必要な場合は新しいアニメや広告を作ったりします。

 ファンがスタジアムに入場してくる11時から12時までは、これから開催される試合日程を1時間ほど延々と流します。この間にスタジアムアナウンサーがイベントを通して読む原稿が出来上がるので、それを参考に自分用のスケジュールを作ります。またプレゼントが当たるラッキーシートの座席番号も12時前には決定するのでそのタイピングも当時進行で行います。

 12時から試合前セレモニーまでの45分間、昨年のハイライトビデオを流します。ハイライトビデオ終了後からが腕の見せどころ。禁煙等、スタジアムの注意条項に始まり、協賛各社の紹介、さらにスタメン発表…。数えてはいないのですが、同じ画像が30秒以上ビジョンに映し出されることはないでしょう。(国歌斉唱の時の揺れる星条旗のアニメーションだけがこの時間帯で唯一30秒以上流れるものだと思われます) スタジアムにいるほぼ全員の人がアメリカ国旗に集中している中、僕は始球式時に出す画像、1回表に打席に立つ選手の再チェックをします。

 そうこうしているうちにようやくプレイボール。タイガースの投手が三振を奪えば「Strike Out!」アニメーション表示、イニング間にはスポンサー各社から送られてきたコマーシャルDVD、5回表終了後のYMCAでは踊るグラウンドキーパー達をライブビデオで撮る…など休む間もなく試合は続きます。



2月27日「開幕前の重労働とは…」

 ジョーカー・マーチャント・スタジアム(レイクランド・タイガースの本拠地)のヴィジョン無しのスコアボードは昨年のハリケーンで壊され、新装することになりました。
 今回設置するのは、スローリプレイなどが表示できる最新式のもの。同じシステムはエンジェル・スタジアム・オブ・アナハイム(ロス・アンゼルス・エンジェルスの本拠地)でも使用されています。

 このスコアボード、操作はいたって簡単です。
 例えば、「Charge!!」という単語をヴィジョンに出したいなら、前もってインプットしておいた「Charge!!」のアイコンをクリックするだけ。
 しかし、問題はこのインプット。新スコアボード元年なだけに、データがまったく入っていません。スコアボード発注会社から多少のアニメーションは頂けますが、それ以外はすべて手作りになります。また、観客を楽しませる動画に加えて広告も作らなければなりません。僕はこの1週間を広告作成に費やしました。

 2000年にコメリカパーク(デトロイト・タイガースの本拠地)がオープンしました。当地のスタジアム・オペレーションスタッフに聞いたところによると、セットアップのためホーム開幕戦3日前から徹夜の作業が続いたそうです。
 マーチャント・スタジアムはコメリカパークのように複数ヴィジョンがあるわけはないので、さすがに3日徹夜という事はなさそうですが、それでも近いことになりそうです。


2月20日「企業スポーツ」

 デトロイト・タイガースは17日にピッチャーとキャッチャーがタイガータウンに集まり、18日から実際の練習が始まりました。最近僕はスタジアムからオフィスに移動する際、わざわざ練習場が見えるように遠回りしてしまいます。

 18日には「パブリックス」という地元で一番のシェアを誇るスーパーと「ユナイテッドウェイ」という慈善団体が主催者となり、チャリティ・ソフトボールのイベントが開催されました。
 対戦カードはパブリックス従業員オールスター対ユナイテッドウェイ・オールスター。
 ユナイテッドウェイ・チームには「オズの魔法使い」こと元セントルイス・カージナルスの名遊撃手オジー・スミスや現タイガース監督のアラン・トランメルなどといった大物大リーガーOBや、アテネオリンピック、アメリカ代表女子ソフトボールチームのジェニー・フィンチ、元NFL選手など豪華メンバーが集結。試合は16-7でユナイテッドウェイチームが勝ちました。

 ユナイテッドウェイはこのイベントを義援金集めのために使いましたが、注目すべき点はパブリックスの方です。
 パブリックスはこのイベントをレイクランド地区での宣伝広告だけでなく、社内間の連帯意識の向上にも使用しました。
 パブリックスはレイクランドで創業し、レイクランドの16人に1人はパブリックスで働いています。今回のソフトボール大会ではパブリックス全店より選手が集められ、「パブリックスOO店XXマネージャーAA選手」とスタメン発表されました。
 この日、約2500人の観客を集めたのですが、パブリックス社員の方々も多数スタンドに足を運んでいました。

 日本では何かと「企業スポーツからの脱却」と謳っていますが、このような企業スポーツが増えたら楽しいかなあ、と思います。
 あなたの会社の連合チームがマスターズリーグのチームと試合をしたら楽しい企画になると思いませんか?


2月13日「はじめまして!!」

 皆さん始めまして。デトロイト・タイガースの武藤です。今週からBallpark Time! Webで週1回連載を持たせてもらうことになりました。
 僕は今、フロリダ州レイクランドにあるタイガータウンでタイガース傘下シングルAのレイクランド・タイガースで働きつつスポーツクラブ経営を学んでいます。もちろん春季キャンプの準備に大忙しです。
 本職は、マサチューセッツ州のEndicott Collegeでスポーツマネージメントを専攻している学生。今はインターンという形でタイガースにお世話になっています。「インターン」とは、簡単に言うと見習い職員です。

 タイガースだけでなくほとんど全てのプロスポーツチームが毎年、全米各地からインターンを数名採用。次世代を行く若者にチャンスを与えつつ、クラブ経営を補助してもらっています。
 僕も学校にあった張り紙はもちろんの事、MLB.comにあった採用情報など様々なツテを元に、メジャー、マイナー含め約20クラブに応募しました。その中できちんと面接してくれたチームはレッドソックス傘下トリプルAのポータケット・レッドソックス、ピッツバーグ・パイレーツ、そしてデトロイト・タイガースだけでした。アメリカでもスポーツ業界は狭き門になっていることを痛感しました。

 今はシーズン前ということで、地元企業に様々な形でチームを援助してもらおうとレイクランド市内を走り回っています。
 目玉はチケット裏に入れる広告。「チケット半券でビール一杯タダ」のようなクーポン広告を地元レストランなどに使ってもらえればと思い、日々、営業に励む毎日です。
 
 先日、タイガースはマグリオ・オルドニェス(前ホワイトソックス)とサインしました。近年はドアマット・チームでしたが、徐々に戦力も備わってきました。
 ヤンキース戦とのオープン戦のチケットは自由席を残し完売。我々スタッフとしてもうれしいことです。
 17日にはパッジ(イバン・ロドリゲス)をはじめとしたバッテリー陣がいよいよやってきます。スプリングトレーニングは目の前です。